80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.329
はみだしチャンピオン 沖田浩之
作詞 阿木燿子
作曲 筒美京平
編曲 筒美京平
発売 1981年8月
3年B組出身、知性と不良っぽさの両面を供え持ち、たのきんの対抗馬一番手のして期待を集めた新人アイドル3枚目シングル
1980年頃、テレビドラマ『3年B組金八先生』や『1年B組新八先生』『2年B組仙八先生』のシリーズは、アイドルや俳優としての登竜門的な役割も果たしていました。最初のシリーズでは田原俊彦、近藤真彦、野村義男、三原順子(国会議員としての姿もさまになってきました)、杉田かおる、鶴見辰吾、小林聡美といったそうそうたる面々が出演し羽ばたいていきました。そして新八先生を挟んでの第2シリーズから羽ばたいていったのが沖田浩之でした。その他には、伊藤つかさ、川上麻衣子、ひかる一平らが同じシリーズに出演していましたね。
こうして『3年B組金八先生』で人気を得た沖田浩之は、1981年3月『E気持』で歌手デビューを果たしました。この『E気持』の歌詞は、思春期の中学生にはちょっとエッチで刺激的な意味深であったのですが、そんなことはお構いなしとばかりに、デビュー曲はオリコン最高8位、売上17.8万枚というヒットにもなり、沖田浩之はたのきんのライバル的な存在として注目されたわけです。一方で青山学院大学にも合格したということが当時話題にもなり、ドラマの中でのツッパッた印象とはまた別の知性的な面を見せることで、女性の心を鷲掴みしたわけです。
ただ歌手沖田浩之のキャリアとしてはここがピークになってしまいます。2ndシングル『半熟期』(1981年6月)はオリコン最高11位、売上9.3万枚とトップ10入りを果たせず、ここで再び勢いを戻すのか、或いは下降線をたどっていくのか、大事な勝負曲となったのが3rdシングル『はみだしチャンピオン』でした。
作詞阿木燿子、作曲筒美京平という組み合わせは、デビュー曲から4thシングル『俺をよろしく』までの4曲連続でしたが、この『はみだしチャンピオン』も阿木燿子らしいちょっと尖った歌詞と、しっかり売れ線でノリの良い筒美京平のメロディーで、私は結構気に入って、よく口ずさんだりもしたものです。ただ売上は盛り上がらず、オリコン最高26位と前作からさらに下降と、デビュー時の勢いはあっという間になくなってしまったのです。うーん、沖田浩之らしくていいと思ったのですがね…。
なんといっても♪アンアン…のところの歌い方がちょっとエロくて、なんともいえない若い色気を感じるのです。
《白を黒と言われて アンアアアンアアンアアンア
あれもダメ これもダメ アンアアアンアアンアアンア》
と歌い始めの部分なのですが、これでいきなり心を掴まれるのです。そして
《あなたとぼくが 愛し合ったら 突然みんながレポーターさ ゥオゥオゥオゥ》
の♪ゥオゥオゥオゥがまたいやらしくて、もうどうにも好きにしてという感じ。
そしてサビの最後で決め台詞的に
《はみだしチャンピオン》
とかっこよく決めてくれるわけで、これ歌うと本当に気持ち良いです。大人になって初めてこの曲がカラオケに入っているのを見つけた時、心は踊りましたね、ほんとに。二人のスキャンダラスで危険な愛の行方を描いたような歌詞も刺激的で、これで売れなかったらもう厳しいでしょう。実際このあとの曲でも再びヒットチャート上位へ戻ってくるということもなく、結果としては一発屋的な感じになってしまったのは残念です。個人的には5thシングル『隠れアムール』がまた隠微な感じがして好きなのですが、アイドルとしてはちょっと攻めすぎ感は否めませんでした…。
さてこの後は次第に役者業に主軸を移していくわけなのですが、若くして自ら命を絶つという最悪の結果になってしまいます。そのニュースを聞いたときは、あのヒロくんがと、やはりそれはショックを受けましたね。