80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.342

 

どうしようもなく恋愛(ラブ・アフェアー)  村井麻里子

作詞 平出よしかつ

作曲 羽場仁志

編曲 林有三

発売 1989年1月

 

台頭してきたガールズポップ群の中の一人として、トレンディドラマ主題歌に抜擢されて注目された村井麻里子の、バブル期の都会的な恋愛を歌った一曲

 

 1980年代半ば頃に、渡辺美里、レベッカ、中村あゆみ、小比類巻かほるといったロック系の女性ボーカリストが群れとして台頭し、そのあとを受けた1987年頃から台頭してきたのがいわゆるガールズポップと呼ばれるカテゴリー。1990年代に入るとさらにこのカテゴリーは活発化していくのですが、ごく初期である1980年代終盤においては、谷村有美、永井真理子、種ともこ、野田幹子、アイドル出身の森川美穂、森高千里あたりがこのカテゴリーの中で台頭してきます。村井麻里子もそんな中の一人といっていいでしょう。

 

 村井麻里子のデビューは1988年5月発売の『ZA ZA ZA』でしたが、オリコンチャートに初めて登場したのが2ndシングル『恋を眠らせない』(1988年10月)で、なんとか100位以内ギリギリの97位に入ってきました。そして今回取り上げる『どうしようもなく恋愛』(恋愛はラブアフェアーと読みます)が、オリコン最高25位とジャンプアップし、売上6.0万枚を記録するスマッシュヒットなったのです。私自身も曲を聴いたのはこの『どうしようもなく恋愛』が最初で、これきっかけで、もった他の曲も聴きたくなって、アルバムをレンタルして聴いてみたりもしました。(アルバムも良かったです)。

 

 ではなぜ『どうしようもなく恋愛』が急にヒットしたかというと、それはトレンディドラマの主題歌に起用されたということが最大の要因にあります。使われたドラマは『君の瞳に恋してる!』で、まさにフジの月曜9時という、まさにど真ん中のトレンディドラマで、出演者が中山美穂、前田耕陽、菊池桃子、大鶴義丹、石田純一、かとうかずこ、石野真子といった面々ですから、当然のように注目されたわけです。当時連続ドラマの主題歌になれば、必ずある程度のヒットは約束されていたようなもので、その中では25位というのはやや弱かったとはいえるのですが、そもそもがまったく一般的知名度のなかった村井麻里子ですから、やはりこの大抜擢は村井麻里子にとっては大きなチャンスとなったことには間違いないでしょう。

 

 さて『どうしようもなく恋愛』の作品ですが、これはまさににぎやかなトレンディドラマにぴったりな曲になっています。一応女性目線ではありますが、世の中の男女の恋愛ごとを客観的にでも情熱的に綴った歌詞になっていて、感情とか情景よりもテンポとか語感とか重視しています。いい意味で中身のない楽曲で、当時バブルの絶頂期、その中での男女の浮かれた都会の空気がよく伝わってきます。その意味手瀬は聴いたり歌ったりして楽しい歌ではありますね。特にサビの部分

《GIRL 女とBOY 男のヒメゴト KISS 愛してTOUCH 愛され生きてる

LOVE 懲りない WHY 罪さえかさねて I Can’t Stop Love My Boy》

と、この軽い感じがウキウキして私は好きです。

 

 そんなバブル臭プンプンの『どうしようもなく恋愛』ですが、作詞は平出よしかつ。他の作品ではCHA—CHAの『ボクらの夢によろしく』が多分唯一のオリコントップ10入りのヒット曲となっていて、あとは郷ひろみ『Zeroになれ』などがあるぐらい。一方、作曲の羽場仁志は藤谷美和子・大内義昭『愛が生まれた日』、中山美穂『愛してるっていわない!』、タッキー&翼『夢物語』『Venus』『Ho!サマー』などのヒット曲の作曲をしていますが、当時はまだ無名の新進作曲家といったところ。そうすると、歌唱も作詞も作曲も実績のほとんどない者同士の楽曲を月9の主題歌に抜擢したということは、なかなかの英断だったと思われますね。

 

 ちょっと奇麗なOLさん的な雰囲気もあった村井麻里子ですが、結局『どうしようもなく恋愛』がキャリアハイの売上となり、その後は一般的なブレイクを果たすことなく、いつの間にか消えてしまったのは残念ではあります。