80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.322

 

夏ざかりほの字組  Toshi&Naoko

作詞 阿久悠

作曲 筒美京平

編曲 新川博

発売 1985年7月

 

 

人気アイドルトシちゃんに対して嫉妬を誘わない相手として選ばれた(?)であろう研ナオコという、異色の組み合わせによるデュエットソング

 

 演歌やムード歌謡では時折みられた有名歌手同士でのデュエットソングですが、ポップス系ではわりと珍しく、一度ヒットしてしまうと、当時広がりを見せていたカラオケでもちょくちょく歌われるという当たればおいしい企画。1980年代では『ふたりの愛ランド』『ロンリー・チャップリン』そしてこの『夏ざかりほの字組』がそんなポップス系のデュエットの代表格といえるでしょう。

 

大学1年生のとき、当時入っていたサークルは他大学との横のつながり(連盟)があったのですが、初めてその連盟の大学(確か5~6ぐらいの大学があって、そのうち女子大が3~4ぐらいという…)が集まって飲み会(当時は大学に入ってしまえば、普通に飲み会をやっていて、今からすると古き良き時代です)が開かれました。そしてその飲み会において、女子大の先輩お姉さんとカラオケで歌ったのが『夏ざかりほの字組』でした。

 

 そんな私の話はともかく、このデュエットToshi&Naokoとは田原俊彦と研ナオコのこと。当時アイドルとして出す曲出す曲チャート上位に送り込んでいた人気絶大の田原俊彦ですから、男女デュエットを歌うとなると、ファンが嫉妬で黙ってはいなかったでしょう。かつて松田聖子とテレビ番組で隣に座っているだけでギャーギャーいわれたくらいですから、相手によってはまた同じようなことになってもおかしくなかったはずです。しかしそこで相手に選ばれたのが研ナオコということで、これで「私のトシちゃんが…」というジェラシーの炎を交わすことができたのです。当時二人はテレビで共演することもちょくちょくあったのですが、年齢の差も8歳ほどありましたし、お姉さんと弟いった感じで、男女の仲にはどうやっても見えなかったので、トシちゃんにとってもファンにとってもは安心の相手であったでしょう。結果としてオリコン最高5位、売上20.1万枚といったヒットになったのでした。

 

 作詞が阿久悠、作曲が筒美京平ということで、まさにヒットメイカーがタッグを組んでの楽曲。企画物とは言え、力の入り具合も伝わってきます。ただ楽曲自体はタイトルからもわかるように、いまや死語になっている「ほの字」なんて言葉を使い、どこかユーモラスな味わいのラブソングになっていて、二人が楽しんで歌っている感を全面に出していこうという意図は見えますね。研ナオコと田原俊彦の二人ですから、色っぽいムードいっぱいのラブソングは似合うはずがなく、やっぱりちょっと茶化したようなこんな曲の方がしっくりきますよね。

 

《ほの字だね これで通じるだろう》

《ほの字だね 夏に魅せられて》

《ほの字は 赤いワインのシャワーで》…

と何度も何度も「ほの字」の言葉が使われ、都合10回も歌われているのです。とにかく力ずくで攻めてきている感じですね。まあ、いい曲というよりは、楽しい曲ですね。せっかく企画したデュエットソングですから、しかも二人のスターが組んでいたわけですから、売れてよかったというのが陣営の正直なところだったのではないでしょうか。

 

 こうして成功のうちに終えたプロジェクトは、当然ながらこれ1回限り。田原俊彦にとっても貴重なデュエット曲になったわけですね。