80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.314

 

SUMMER EYES  菊池桃子

作詞 秋元康

作曲 林哲司

編曲 林哲司

発売 1984年7月

 

 

初のシングルチャートトップ10入りを果たした菊池桃子2ndシングル、その後の菊池桃子の曲の方向性を決めたような夏の避暑地ソング

 

 1984年4月『青春のいじわる』で歌手デビューした菊池桃子。その前年1983年から芸能活動を始め、アイドルグラビア雑誌『Momoco』のイメージガールを務め、雑誌の名前と自身の名前がリンクした、前代未聞の戦略をかけていきます。そのほかCMやラジオにも出演し、地ならしを進めたところで、翌1984年3月『パンツの穴』で映画デビューを果たし、練りに練られた売り出し計画によって、機が熟したところでついに歌手デビューとなったのです。『青春のいじわる』は新人としては上出来のオリコン最高13位、売上14.3万枚を記録し、そして2ndシングル『SUMMER EYES』でオリコン7位、売上19.5万枚と初のトップ10入りを叶えたのでした。

 

 この『SUMMER EYS』は夏の避暑地を舞台に、恋から身を引くように黙って去っていく女の子の気持ちを歌ったせつない曲ですが、のちの菊池桃子のシングルをみると、この曲のイメージが結果としてベースになっているような、そんなふうに思わされる曲となっています。季節はともかく、陽の当たる高原とか、海沿いの道路とか、リゾートのイメージなんですよね、菊池桃子の歌って。『Broken Sunset』(1986年2月)、『もう逢えないかもしれない』(1985年9月)、『夏色片想い』(1986年5月)、『ガラスの草原』(1987年10月)といった作品が、まさにそのイメージ上にある作品でして、そんな作品群の最初にきたのが『SUMMER EYS』だったのです。

 

 作詞・作曲は秋元康と林哲司。秋元康は菊池桃子のデビュー曲から5thシングルまでを担当、林哲司は菊池桃子の全シングルの作曲(編曲は10thシングルまで)を担当ということで、この二人が歌手菊池桃子の礎を築いたといっても過言ではないでしょう。『SUMMER EYS』の発売は夏真っ盛りの7月ということで、前述のように夏の避暑地を舞台にした歌詞になっていますが、夏の歌と言ってもどこか涼しげな雰囲気があるのがこの曲。夏の歌だからと言って、ギラギラ太陽の下、ビーチで水着で駆け回る(早見優とか石川秀美とかのように…)といったイメージではなかったようですね、菊池桃子は。ただこの歌詞、おしゃれでいい雰囲気なのですが、何が起きているのか、実はちょっとわかりにくいのです。

 

《コテージの窓から広がる コバルトのリーフが光れば》

といきなりおしゃれな雰囲気で始まります。

《陽に灼けた横顔ためらい 少しうつむいて 少年みたいね》

どうやら夏の避暑地らしいことがここで分かります。陽に灼けた「少年みたい」ということは、少年ではない大人の男性がそこにいるのでしょう。

《私ひとり街へ帰る 海風聞かせて》

ん?この女性が一人でコテージを後にする展開へとなります。何があったのでしょうか?

《君のせいじゃない 言い出せなかった 私がいけないだけよ

彼女には何も 知らせずにいてね 遠くで見つめていたい》

これ、難解です。何が「君のせいじゃない」の?彼女とは誰?私と君と彼女の関係は?

《シャツのえりを直しながら 涙をかくした》

この女性も泣いているのですね。

《君のせいじゃない そんなに自分を 責めたら悲しくなるわ》

男性の方も自分が悪いのだと思っているようです。

《風邪をひいたのと 伝えておいてね 誰かに聞かれた時は》

《悪いのは私 困らせてばかり ごめんね好きだったこと》

避暑地へはグループで来ていたようで、その中からこの女性は一人黙って去っていくのですね。そしてこの女性は男性のことが好きだったようです。でもそれは過去形になっているのですよね。 正直なところ、当時もそうでしたし、今でもこれがどういうシチュエーションなのかが良く分かりません。でもその謎めいた分かりにくさが、この曲については不思議な魅力になって居のかもしれません。それがゆえに、菊池桃子の中では、私にとってこの曲のインパクトが強く残っているのです。

 

 その後オリコン1位を7作連続で獲得して、トップアイドルとなった菊池桃子。「桃子」という名前が女の子の名前に付けられることが増えたのも菊池桃子以降(あと「ハイティーン・ブギ」もあるかも)ですし、前述のように雑誌に自身の名前が付けられ、その「モモコクラブ」からも多数のアイドルが輩出されたりと、結構世の中に大きな影響を与えていたりもするわけです。今は文化的な方面での活躍が目立つ桃子さんですが、アイドル時代と雰囲気がほとんど変わらないというのも、なかなかすごいことだと思っています。

 

最後に、菊池桃子のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 SUMMER EYES 

2 アイドルを探せ  

3 BROKEN SUNSET 

4 青春のいじわる ★ 

5 雪に書いたLOVE LETTER

6 夏色片想い  

7 もう逢えないかもしれない 

8 Say Yes! 

9 BOYのテーマ 

10  卒業