80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.303
Hold On Me 小比類巻かほる
作詞 麻生圭子
作曲 大内義昭
編曲 土屋昌巳
発売 1987年2月
ドラマの主題歌として火がつきヒット、一度聞いたら忘れない変わった苗字が印象的な、パワフルボーカルの女性シンガーの初のトップ10入りシングル
小比類巻かほるは1985年10月『Never Say Good-Bye』でデビュー、このデビュー曲はドラマ「ポニーテールはふり向かない」の主題歌に起用され、オリコン最高32位、売上7.3万枚を記録しました。続く2nd『両手いっぱいのジョニー』(1986年7月)もセールス的にはやや落ちますが、楽曲の出来は良くて評価も高く、小比類巻かほるの名前はじわじわと音楽界でも知られつつある状態にあったのが1986年まで。そして1987年になり、いよいよブレイクを果たしたのが4thシングル『Hold On Me』です。この曲はテレビドラマ「結婚物語」の主題歌にも起用され、さらに多くの人の耳に届くことになり、オリコン最高9位、売上12.9万枚の実績を残しました。
小比類巻かほる…一度聞いたらまず忘れない印象的な苗字で、これもまたひとつの武器になったのではないでしょうか。ちょっと名前を耳にするだけで、あの人だとすぐに思い出す変わった名前は、人前に出る人にとっては優位でしよう。実際にこのブレイクをきっかけに、人気シンガーの仲間入りを果たした小比類巻かほるは、この年の紅白歌合戦にも出場を果たしたのです。
その『Hold On Me』ですが、作詞・作曲・編曲の組み合わせがまた個性的で面白いですね。作品自体はわりとオーソドックスで、彼女のパワフルで伸びのある歌唱力を生かしたロック曲ではありますが、改めて今回みてみると、意外な3人のような気がします。作詞は麻生圭子。2ndシングルまでは自身が作曲していましたが、3th『長く熱い夜』(1986年12月)から4曲連続で作詞を担当したのが麻生圭子です。この4曲以降はまた自身の作詞に戻るわけですので、そこにどんな戦略があったのでしょうか。他にもヒット曲を多数提供している麻生圭子だけに、いよいよジャンプアップという時期だけ、プロの作詞家の力を借りたということでしょうか。
作曲は大内義昭。作詞家作曲家としても幅広く活動をしていて、その中でも小比類巻かほるには『Hold On Me』『City Hunter』(1987年5月)、『DREAMER』(1989年9月)といった3曲のトップ10入りシングルをはじめとする多くの楽曲を提供しています。もっとも大内義昭で最も有名なのは、大ヒットした藤谷美和子とのデュエット曲『愛が生まれた日』で、実はこの曲に関しては作詞・作曲には携わっていないのですよね。
その二人に一風堂でおなじみの土屋昌巳が編曲を担当したのが『Hold on Me』ということで、おなじみのヒットメーカーの組み合わせとはちょっと違うタッグによって、小比類巻かほるはブレイクを果たしたわけです。曲自体は前述のように奇をてらったものではなく、ストレートなラブソングです。ただ歌い手もあまりくせのない素直でまっすぐなボーカルであるため、変に小細工するより、そのまま聴き手に響いてくるのですよね。特にサビではパワフルなボーカルが生きて、強く耳に残るので、そういった点でもドラマとのタイアップは効果的だったでしょうね。
80年代後半を中心にヒットチャートを賑わした小比類巻かほるは、その後もコンスタントに歌手活動を続けていて、今も現役バリバリでステージに立ったり、曲をリリースしたりしているようです。