80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.302

 

エスケイプ!  五十嵐いづみ

作詞 石川あゆ子

作曲 朝倉紀幸

編曲 芳野藤丸

発売 1987年11月

 

 

可愛い系のアイドル勢とは一線を画した美形を売りに、ドラマで活躍をしていた五十嵐いつ゜みの、歌手としてもっとも売れたセカンドシングル

 

 五十嵐いづみは1987年7月『スカイバレー』で歌手デビュー。このデビュー曲はオリコン最高28位、売上2.1万枚ということで、まずまず健闘したといっていいスタートでした。その歌手活動の一方で、映画「ビー・パップ・ハイスクール」シリーズや「新宿純愛物語」などの女優業にも力を入れ、そして自らの主演ドラマ「少女コマンドーIZUMI」まで作られることになります。その挿入歌が今回とりあげた『エスケイプ!』というわけです。デビューの年でいきなりの主演ドラマということで、事務所の期待の大きさがうかがえる抜擢で、そして『エスケイプ!』もオリコン最高14位、売上4.9万枚とジャンプアップを果たしたのでした。

 

 主演ドラマ+主題歌というパターンは、力をいれて売り出したいアイドルには、当時よくあったことではありましたが、五十嵐いづみはアイドルというには雰囲気も落ち着いて大人びた感じがあり、ニコニコ笑顔で愛想のよいアイドルちゃんにはあまり向いていないようには見えました。年齢的に歌手デビュー時点で18歳と、そこそこ大人の年齢。さらに歌もお世辞にも上手とは言えず、それでもとにかく売り出しをかけるために、当時の新人タレントの例にもれず、歌を歌わされたといったところでしょうか。実際のところ、五十嵐いづみの仕事も、次第に歌手業からはフェイドアウトしていき、その活躍の中心は演技の仕事に完全に移っていくことになったのですからね。

 

 さて、その『エスケイプ!』ですが、やはり彼女自身のキャラクターに合わせたカッコいい系で尖がった曲に仕上がっています。作詞は石川あゆ子。女性アイドルを中心にいろいろなアーティストへ作品は提供しているようですが、シングルトップ10入りしたようなヒットはないようです。作曲の朝倉紀幸は自らがボーカルを務めた朝倉紀幸&ギャングとして『ライオンは起きている』を最高18位、売上14.4枚とスマッシュヒットさせていて、作曲家としてはBaBe『TONIGHT!』、CoCo『夢だけ見てる』『夏空のDreamer』、西田ひかる『きっと愛がある』、大西結花『チャンスは一度だけ』などの曲を提供しています。

 

《ナイフみたいな花びらが散る》

《あなたを殺す夢をみたから》

《罪の匂いを雨で洗うけど》

とアイドルの歌としては結構尖った言葉が使われていてドキッとするのですが、ドラマのイメージにも合うようにというのがあったのでしょうか。歌詞の内容自体はかなり抽象的で、あまりストーリー性がなく、雰囲気重視といったところで、ドラマ挿入歌としたらそれが大事だったのでしょう。実際それで売れたのですから、戦略としては間違っていなかったということだと思います。

 

 さて五十嵐いづみですが、次の3rdシングル『素直になれなくて』(1988年2月) は「少女コマンドーIZUMI」の途中から主題歌に起用されましたが、こちらはオリコン53位、売上0.5万枚と成績は急落。個人的には『エスケイプ!』よりも『素直になれなくて』の方がだいぶ好きだったのですが、前曲が刺激的だった分、大人しく感じられたのでしょうかね。これを最後にシングルチャートからは遠ざかっていき、前述のように完全に女優業にシフトしていくのですが、2001年結婚を機会に引退してしまいました。