80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.293
最後の言い訳 徳永英明
作詞 麻生圭子
作曲 徳永英明
編曲 瀬尾一三
発売 1988年10月
徳永英明のハイトーンボーカルを最大限に生かした、切なさ悲しさがとめどなくあふれ出てくるスローバラードの名曲
1986年1月『Rainy Blue』で歌手デビューを果たした徳永英明は、ほれぼれするようなハイトーンボイスと、映画の主役でも通ずるような甘いマスク(当時はイケメンという言葉はなかったです)で人気歌手の仲間入りを果たします。しかしいきなり売れたわけではなく、今でこそ名曲として扱われている『Rainy Blue』は実は当初はほとんど売れず、オリコン最高90位という実績にすぎませんでした。やはり曲がいいだけではなかなか最初はヒットには結びつかず、ブレイクを果たすには多くの人々の耳に届くきっかけが必要なのですね。徳永英明にとってそのきっかけとなったのが、南野陽子が出演したフジカラーのCMでした。そのCMに起用されたのが徳永英明4thシングル『輝きながら…』で、これがCMのイメージにぴったりとはまり、オリコン最高4位、28.6万枚のヒットとなり、徳永英明の存在が一気に知れ渡ったというわけです。
これ以後は出す曲出す曲がシングルチャートのトップ10入りを果たし、9曲連続、さらに1曲だけ挟んで、6曲連続、計15曲ものトップ10入りヒットを生み出したのです。その中から今回取り上げたのが、6thシングル『最後の言い訳』です。この曲はオリコン最高4位、売上23.3万枚とまずまずの実績を残しています。
『最後の言い訳』は恋人が部屋をそっと出ていくのを、寝たふりをしながら感じているという、せつない別れの曲ですが、ゆっくりゆっくりしたテンポのメロディーに、厳選された言葉がのせられた歌詞が特徴で、とにかく聴き入ってしまいます。イントロも歌が始まるまで結構長く、曲調もわりとシンプルな割に6分17分という長い曲なのですが、それでも聴いていて、まだ終わるなまだ終わるなと思えてしまうのです。恋人が出ていこうと荷物をまとめ簡単な身支度をしているのを、まだ出ていくなまだ出ていくなとどこかで思いながらその音を聴いているのと、同じような感覚に襲われているのかもしれません。
《いちばん大事なものが いちばん遠くへ行くよ》
《いちばん近くにいても いちばん判り合えない》
とサビで繰り返される言葉に、その思いがあふれ出ているようで、徳永英明のハイトーンボイスのそれを聴いていると、その切なさがとこたんまで伝わってくるようです。
キャッチーなメロディーやフレーズがあるわけでもなく、一回聴いただけでは地味な曲にも思えてしまうのですが、聴けば聴くほどその切なさが増幅されてきて、曲の中に気持ちが入り込むような、味わいのある曲、それが『最後の言い訳』なのですね。
徳永英明の代表曲と言われると、今では大概『Rainy Blue』『壊れかけのRadio』或いは『輝きながら…』『夢を信じて』あたりや、後にカバー曲を中心歌っていた頃の曲が紹介されたりすることが多いのですが、当時を知らない人たちにはぜひ『最後の言い訳』を取り上げてくれたら嬉しいななんて、個人的には思っています。
最後に、徳永英明のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 最後の言い訳 ★
2 夢を信じて
3 Rainy Blue ★
4 輝きながら… ★
5 もう一度あの日のように
6 壊れかけのRadio
7 LOVE IS ALL
8 Wednesday Moon
9 恋の行方
10 永遠の果てに
★=80年代発売