80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.284

 

季節(シーズン)  沢田聖子

作詞 三浦徳子

作曲 沢田聖子

編曲 渡辺博也

発売 198311

 

 

 

イルカの妹分としてデビュー、素朴なアイドル的存在からアーティストへと脱皮するターニングポイントとなった爽やかなラブソング

 

 実は私、若い頃の一時期、沢田聖子にはまっていた時期があって、アルバムも何枚か遡って買ったりもしていました。きっかけとなったのは実は1979年にデビューしてから5年ほども経った12thシングル『あなたからF..(198412)で、この曲を大いに気に入ってしまったことから、次に当時の最新アルバムを買い、さらにはその前、その前と買っていったわけです。それまではもちろん沢田聖子の存在は知っていましたが、聴いた曲は7thシングル『卒業』(19821)ぐらいで、知っている知識としてはイルカの子分的存在ということぐらい。『卒業』は沢田聖子のシングルの中では最も売れたシングルですが、それでもオリコンの順位は50位、売上は5.0万枚という程度です。

 

 さてそこで、365アーティストの中で沢田聖子をとりあげたいという中で、どの曲を選ぼうかと考えた時に、最初は一番実績のある『卒業』にしようかと思ったのですが、やっぱり好きな曲にしたいというのがありましたので、一番好きな『シオン』(197910)や前述の『あなたからF..を考えました。ところがこの2曲はオリコンのトップ100にも入っていないのですよね。それではあまりにマニアックになってしまうということで、最終的に選んだのが『季節(シーズン)』でした。

 

『季節(シーズン)』は沢田聖子の曲の中ではポップで明るい曲で、他の曲とは違う魅力が感じられて、私は好きですね。オリコンの最高は74位ということで、さほどヒットはしなかったのですが、沢田聖子の代表曲のひとつになっています。シングルでは久しぶりに自身の作曲ということで、ひとつのきっかけ、ターニングポイントにもなったのではないでしょうか。イルカの妹分のアイドル的なフォークシンガーから、幅広い曲を歌って作れるニューミュージック系のシンガーソングライター、そんなところでしょうか。実際にこの1つ前のシングル『ドール・ハウス(19833)は作詞・作曲をイルカが務めていましたから、この曲を転換点としてイルカの妹分から脱皮していったということになりそうです。

 

歌詞は『卒業』と同じ三浦徳子ということで、このあたりはある程度のヒットを狙っていたのかもしれません。実際に『季節』の歌詞は、癖のない分かりやすい歌詞になっています。冒頭で

《傾いて行く 傾いて行く あなたに向かって心が 傾いて行く 傾いて行く 好きになってもいいですか》

とストレートに恋心を綴っています。そのあとも、この彼のことが好きで好きでしょうがないのだろうなあと思うような微笑ましい歌詞の連続。彼が楽しそうなら自分も楽しいし、彼が落ち込んでいると自分も心配になるという乙女心。彼のことを考えているだけで楽しい感じが、メロディが明るくポップなので、弾んで伝わってくるので、聴いていてとにかくウキウキ気分になれます。悲しかったり切なかったり寂しかったりする曲が多い沢田聖子の中では、際立った明るさが、私はとても気に入っているのです。

 

ただ沢田聖子はラジオなどで取り上げられる機会はそこそこあったのですが、結果的にセールス面ではブレイクし切れなかったというのが個人的には残念で、もう少し売れても良かったのになとは思っています。沢田聖子自身はこのあとも精力的にシングルやアルバムをリリースし続けていったわけで、それは嬉しいことではありますが。