80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.270

 

人間の駱駝  大塚ガリバー

作詞 宮本輝、秋元康

作曲 長渕剛

編曲 瀬尾一三

発売 198311

 

 

 

長渕剛としては貴重な他のアーティストへの提供曲、大塚ガリバー本人も出演したテレビドラマ『青が散る』の挿入歌

 

 TBSドラマ『青が散る』は宮本輝の小説が原作で、198310月から放映された青春ドラマなのですが、私は個人的にこの作品がドラマも原作も大好きです。ドラマの主演は当時新人だった石黒賢、ヒロインが二谷友里恵、そのほかの出演者に佐藤浩市、川上麻衣子、遠藤憲一、広田レオナ(玲央名)、利重剛、村田雄浩、吉行和子、斉藤洋介、あき竹城など、今となればなかなかのキャストが揃っていたのですが、そのキャストの一人としてミュージシャンを目指す青年の役で出演していたのが大塚ガリバーでした。野球選手の夢が挫折し、次の夢として選んだのがミュージシャンということで、劇中で大塚ガリバーが歌っていたのが『人間の駱駝』でした。これで「ひとのらくだ」と読ませます。大塚ガリバーの「ガラガラ声」で熱唱する『人間の駱駝』はなかなか味わいのある曲で、個人的には発売前からとても気に入っていたのです。ちなみにテーマソングは松田聖子の『蒼いフォトグラフ』で、これもまた大好きな曲であります。

 

 さてこの『人間の駱駝』なのですが、作曲はなんと長渕剛なのですね。そういわれてみれば、当時の長渕っぽいなという感じはしたのですが、今となってみれば、長渕剛が他のアーティストに曲を提供していたこと自体が貴重です。どういう経緯でそういう流れになったのか、ちょっと知りたいところではありますね。一方作詞は、原作の小説の中で書かれていた宮本輝の原詩を、秋元康が手を入れて曲らしくし上げたものになっています。当時長渕剛と秋元康の繋がりは深くて、確かラジオの仕事を一緒なしていたんですよね。当時秋元康がやっているラジオを受験勉強しながらよく聞いていたのですが、そんな話をしていたのも覚えています。実際に『GOOD-BYE青春』『孤独なハート』なんかの作詞も担当していましたしね。

 

 それでもって大塚ガリバーの『人間の駱駝』ですが、オリコンでは最高28位、売上5.1万枚という結果でして、新人としてはまあまあと捉えるのか、ドラマでさんざん流されたわりにはいまいちと捉えるのか微妙なところではありますが、個人的にはもっと売れるのかなとは思っていました。実際にこの歌を好きだったので、良く口ずさんでいましたので、売れてほしかったですね。ドラマも好きだったというのももちろんありますしね。

 

《大都会という名の砂漠に ひとの駱駝が生きている 汗も脂も乾ききって 背中の瘤は夢ばかり》

と大都会でせかせかと働きまわる人間たちを駱駝にたとえながら、都会でもがきながら日々を過ごす人々の嘆きを歌っている、そんな歌です。

《生きていたい 生きていたいだけのひとの駱駝》

というサビのフレーズが胸にささります。

 

結局大塚ガリバーはこの1曲だけで、ヒットチャートからは姿を見せなくなります。もっとも音楽の世界で仕事はずっとしていたようで、柳葉敏郎に曲を提供したりもしていたみたいですね。どれだけの人が大塚ガリバーを覚えているのか分かりませんが、私には『人間の駱駝』は今でも印象深い曲として残っています。