80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.267

 

ゆけ!ゆけ!川口浩!!  嘉門達夫

作詞 嘉門達夫、青木一郎

作曲 嘉門達夫

編曲 新田一郎

発売 19846

 

 

 

のちのコミックソング、パロディソングの第一人者の出世作は、当時のテレビ番組を揶揄した実名入りの一曲

 

 特に1990年代の前半において、『替え歌メドレー』シリーズや『鼻から牛乳』シリーズでヒットを飛ばし、コミックソング、ギャグソング、パロディソングの分野において一時代を築いた嘉門達夫。初めてのヒットチャートのトップ100入りは19837月発売の『ヤンキーの兄ちゃんのうた』で、最高71位で売上2.5万枚という実績でした。この曲はそこそこ話題になり、嘉門達夫の初期の代表曲の一つではありましたが、本格的にその名が広がったのが、その次のシングル『ゆけ!ゆけ!川口浩!!』でした。この曲はオリコン最高24位ながら、売上が10.1万枚と、じわじわと長く売れ、嘉門達夫にとっての出世作といえるシングルになったのです。

 

 さて、タイトルに使われている川口浩ですが、私より上の世代の人たちにとっては、俳優というイメージが強いでしょう。私は映画が好きでよく古い映画も観たりするのですが、川口浩の出演している作品も何本か観たことがあります。ただ私の世代にとっては、テレビの探検番組の隊長を務めているおじさんという印象しかなくて、この『ゆけ!ゆけ!川口浩!!』はまさにその隊長川口浩を茶化した歌となっています。当時テレビの特番として不定期に、ジャングルの奥地などで謎の生物だったり、恐ろしい原住民だったりに、川口浩率いる探検隊が遭遇するような、探検ドキュメンタリー番組が放送されていたのです。ただその内容が、子供が見ても「おやっ?」と思ってしまうような演出がされていて、今の時代だと「やらせ」だと大問題になり兼ねないことが繰り広げられていたのですが、観ている側もその演出らしきものをも楽しんでいるところもあったのですね。その暗黙の了解を茶化した『ゆけ!ゆけ!川口浩!!』の登場によって、よくぞ我々の思いを歌にしてくれた!ということで、みんなが共感し、そして堂々と笑うことができたわけです。

 

 《川口浩が洞窟に入る カメラマンと照明さんの後に入る》

《洞窟の中には 白骨が転がる 何かで磨いたような ピカピカの白骨が転がる》

《動かないサソリがおそってくる》

《溺れている原住民の顔は笑ってる》

《未開のジャングルを進む 道には何故かタイヤの跡がある》

《ジャングルの奥地に新人類発見!腕には時計の跡がある》

《こんな大発見をしながら けっして学会には発表しない》

とまあ、次から次へとコケにしているような歌詞のオンパレード。よくもテレビ局からクレームが来なかったものです。いや、もしかしたら来ていたのかもしれませんが、でも発売中止なんてことはなかったですからね、やはり「暗黙の了解」ということだったのでしょうか。

 いずれにせよ、嘉門達夫にとっては知名度を高める大きなきっかけとなり、その後はコミックソングの第一人者として、活躍範囲を広げていくことになります。冒頭に示したヒット曲のほか、なんと紅白歌合戦にも出場を果たしたわけですから、大したものです。ただし嘉門達夫の場合は、一曲だけを切り取ったシングルよりもアルバムの方が充実していて、私も何枚かレンタルしてカセットテープに録音しては、それを聴いてよく笑っていました。いろいろなタイプの歌を聴けて、さらにはそのつなぎもいろいろと工夫が施されていて、とにかく楽しかったのを覚えています。まさに真骨頂といった感じでした。

 

 今は嘉門タツオと名前をカタカナにしているようです。