80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.259
恋は、ご多忙申し上げます 原由子
作詞 桑田佳祐
作曲 桑田佳祐
編曲 桑田佳祐&Head Arangers
発売 1983年8月
化粧品のCMソングとして浸透、ソロ歌手原坊として初めてのトップ10入りシングル曲は、桑田佳祐作詞作曲によるポップチューン
今さらいうまでもなくサザンオールスターズの紅一点メンバーで、前年1982年には桑田佳祐の奥さまになっている原由子。ソロ歌手としてのデビューは1981年4月の『I Love Youはひとりごと』で、オリコンでは最高35位という結果になっています。もっともサザンオールスターズのアルバムの中では、1980年発売のアルバム「タイニイ・バブルス」の『私はピアノ』でボーカルをとっていて、以後サザンオールスターズのボーカル原由子と、ソロ歌手原由子と並行して活動していくことになります。
『私はピアノ』については高田みづえがカバーして大ヒットし、そこでオリジナルの原坊版が改めて注目されたというのはありましたが、ソロ歌手原由子としての初めてのヒットとなったのが、今回取り上げる4thシングル『恋は、ご多忙申し上げます』です。この曲は資生堂のCMソングとして起用されたこともあって、多くの人の耳に届くことになり、結果としてオリコン最高5位、売上24.7万枚を記録したのです。ソロのシングルでは自身作詞・作曲の楽曲も歌ったりしている原由子ですが、この曲に関しては作詞・作曲はともに桑田佳祐。まあ、そういわれると、サザンの曲と一緒じゃんということになってしまうのですが、作品自体の雰囲気は、明らかにサザンオールスターズとしてのそれとは違うものにはなっています。
まずイントロがいいですね。弾むようなピアノのような音で始まりますが、これだけでウキウキ気持ちまでも弾んでくるような気持ちになります。起用されたCMは資生堂フェアネスですが、同じ1983年の春に起用されたのがEPOの『う・ふ・ふ・ふ』ですし、翌1984年の春が高見知佳『くちびるヌード』だったりと、女性シンガーによるポップで明るい曲がひとつの定番になっていたようで、この『恋は、ご多忙申し上げます』もその路線上にあるような曲でした。
さらに歌詞をみると、あー、これは原由子本人ではなくて桑田佳祐だなと、改めで納得させられるものになっています。秋口に入って、夏の日々の恋を思い出しながら、ちょっぴり寂しい気持ちに浸っている女性の気持ちを歌った歌詞の中に、ふんだんに言葉遊びが織り込められていて、まさに桑田佳祐の真骨頂といった印象。
《遊び疲れたからだに 彼のにおいがまだ生々しい》
なんて表現は、やっぱり桑田佳祐ですし、
《あなただけを愛・視点・ルール》
《二人だけは恋・視点・ルール》
のサビのフレーズでの一つの語句に二つの意味を持たせるあたりは得意とするところ。ちょっと生々しいし、わざとらしくも思えてしまうのですが、でもこれを原由子が歌うと、可愛く優しい感じの印象に変わってしまうのですよね。それ以後の曲も含めて、サザンで歌う時の原由子よりも、ソロでの原由子の曲は、優しかったりほのぼのしたりという印象はありますね。
80年代においては、『ガール』(1988年4月)が健闘したものの、ほぼ『恋は、ご多忙申し上げます』が唯一のソロヒット曲といった感じでしたが、90年代に入って『ハートせつなく』(1991年3月)、『じんじん』(1991年5月)、『負けるな女の子!』(1991年11月)と売上10万枚越えを果たしました。そして2009年8月発売の『夢をアリガトウ』がオリコン5位と26年ぶりのトップ10入りと、長年にわたってソロとしても活躍をしてくれているのはファンには嬉しいところでしょう。直近では超久々のアルバムも発表されたみたいで、まだまだ健在のようです。