80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.258

 

青空オンリー・ユー  ひかる一平

作詞 松本隆

作曲 加瀬邦彦

編曲 伊藤銀次、大村雅朗

発売 19815

 

 

 

ドラマ金八先生で人気に、心もとない歌唱力もまた母性本能をくすぐる元祖可愛い系ジャニーズのデビュー曲

 

 1980年前半のジャニーズは、「○年B組○八先生」のドラマに出演し顔を売ってからレコードデビューというのが一つのパターンになっていて、田原俊彦、近藤真彦、野村義男(The Good-Bye)、シブがき隊と続きますが、実はひかる一平もその一人。ひかる一平は「3B組金八先生」の第2シリーズに主演し、大人しいけれど、衝撃的なセリフで話題となる役どころで、あの可愛らしい生徒は誰なんだ?と人気を呼んだのでした。こうして名前と顔が知られて注目されたところで、さあデビューとリリースしたのが『青空オンリー・ユー』でした。

 

 ひかる一平がデビューした1981年は、男性のソロアイドルがたくさんデビューして新人賞を賑わした稀有な年でして、ひかる一平のほか沖田浩之、竹本孝之、堤大二郎、竹宏治(清水宏次朗)らが一気に登場してきました。そんな中でツッパリ系の沖田浩之、竹宏治、正統派イケメンの堤大二郎、さわやか系竹本孝之と色分けされていて、ひかる一平は完全に可愛い系のカテゴリーの代表となっていました。デビュー曲『青空オンリー・ユー』はオリコン最高19位、売上6.1万枚ということで、デビュー曲では沖田浩之に次ぐ実績を残していたのです。ただ、この『青空オンリー・ユー』に喜んだファンも多かったであろう反面、この頼りない歌唱力にがっかりした人も多かったのではないでしょうか。当時田原俊彦の歌唱がさんざん叩かれていたのですが、それ以上に不安定な印象は確かにありました。これは歌手では難しいのではないかと、そんな不安がよぎった人も多いのでしょうが、実際にその不安は的中することになります。もっともそれは、この後に分かってくることでもデビューした時点では、やはり今後の展開が期待されたアイドルだったのです。

 

 『青空オンリー・ユー』はなんと作詞が松本隆だったのですね。今回改めて調べてみて、ちょっと驚き。歌詞については、ひかる一平のキャラクターに合わせたような、優しくてちょっと控えめな感じの男の子の恋心を歌ったラブソングとなっています。

《もうじれったくて走ってきたのさ》

《ピュアな気持ちだよ メロメロにしびれちまう》

《まだ君の髪に触れたこともない》

《マジな話だよ クラクラにときめいて》

と、当時主流のツッパリ系で自信満々の男どもとは対極にある可愛い系の男の子が主人公。その男の子が

《逢いたくて 呼び出して悪いね》

《好きなんだ You’re the only one

と、まさに気持ちを伝えようとしているのでしょうね。それでいて《Stop 答えは Stop いらない 青空オンリーユー》となんと能天気で爽やかなこと! よく考えてみるとよく分からないタイトルで、「青空君だけ」って何なのでしょう。まあ、雰囲気ですね、雰囲気。きっと。

 

 そんな爽やか可愛いくんで売り出したひかる一平でしたが、結果としてデビュー曲がピークでした。やはりどこか頼りなさげな感じは、ツッパリくん絶頂の時代には、あまり支持されなかったのかもしれません。2ndシングル『可愛いデビル』(19818)はオリコン最高58位と急激にランクも下がってしまい、アイドルの生き残り戦線からは早いうちに離脱してしまったのです。まあ、今のようなグループ全盛時代だったら、歌唱力の弱さも周りがカバーできますし、バランスをとる意味でもひかる一平のようなキャラクターのメンバーがいても面白かったのかもしれませんが、当時はソロが主流。一人ですべて背負って戦うには、ちょっと線が細かったのかもしれませんね。