80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.257
コントロール 河合奈保子
作詞 売野雅勇
作曲 八神純子
編曲 大村雅朗
発売 1984年6月
ちょっと大人になった河合奈保子を前面に出した一連の中の一曲、八神純子の焦燥感あるメロディがドキドキ感を誘う
当時はあまりクローズアップされることがなかったのですが、今聴くと河合奈保子って声に伸びがあって歌が上手なんですよね。1980年代には歌がうまいアイドルはたくさんいて、それに比べて今は…なんて嘆きたくなってしまいます。そんな河合奈保子、1980年6月に『大きな家の小さなお家』でデビューし、5thシングル『スマイル・フォー・ミー』(1981年6月)がオリコン4位、売上26.0万枚と初のトップテン入りを果たすと、トップアイドルとして安定した活躍を続けていくことになります。
デビューからしばらくの間、11th『Invitation』(1982年11月)あたりまでは、いかにもアイドルらしい楽曲を歌っていましたが、12th『エスカレーション』(1983年6月)ぐらいから、少し大人の曲にも挑戦するようになってきていました。その中でアップテンポ系の曲としては河合奈保子として最大セールスを記録した『エスカレーション』(1983年6月)、『UNバランス』(1983年9月)、今回取り上げた『コントロール』、そして『唇のプライバシー』(1984年8月)といった一連の流れがあり、いずれも大人の恋愛の中での誘い誘われるドキドキ感を歌った曲となっています。そしてこの3曲の中で『コントロール』だけは作曲が八神純子で、他の3曲は筒美京平が作曲をしています。
河合奈保子も1982年頃から、いわゆる当時でいうニューミュージック系のアーティストと積極的に組むようになっていて、竹内まりや、来生たかお、尾崎亜美らの作品をシングルに起用していましたが、その流れの中に『コントロール』もあったといえるでしょう。ただ前述の3者は他にも多くのアイドルに曲を提供しているのに対し、八神純子の他の歌手への曲提供はかなり限定的です。ヒット曲となると、この『コントロール』が唯一といってもいいかもしれません。そういった意味では貴重なシングル曲だといえるでしょうね。
歌詞は、好きな男性に対する気持ちが大きくなりすぎている中、その男性はいかにも冷静に私を押したり引いたりしながら揺さぶってきて、自分で自分を制御するのがどうにも難しくなっている状況を歌った内容になっています。そんな歌詞に、八神純子の作ったメロディーが焦燥感を掻き立てるメロディーが見事にはまり、それを河合奈保子がきちんと歌い切っていているのです。アップテンポではありますが、どうしよう、どうしようというドキドキ感を煽るようなところが個人的には気に入っていて、河合奈保子のシングルの中でも好きな曲のひとつになっています。セールス的にはオリコン7位、売上15.0万枚ということで、目立った実績ではないのですが、中期の河合奈保子のひとつの到達点ではないかと思っています。
この後河合奈保子は1985年6月発売の21枚目シングル『デビュー』で初めて且つ唯一のオリコン1位を獲得すると、1986年11月発売『ハーフムーン・セレナーデ』からは自身の作曲による楽曲をシングルとして送り出すようになります。河合奈保子作曲の曲は、アイドルがとりあえず曲をかいてみました的な感じでは決してなく、しっかり実力をつけたうえで満を持して発表したといった印象が強く、その味わいのある楽曲には努力と才能を感じさせるものが十分にありました。ですから、その後結婚して一切芸能活動を閉じてしまったことが、とても惜しいことだと、今でも思っています。自作の曲を出すようになったのが、アイドルとしての人気が下降期に入ってからということもあり、なかなか作曲家河合奈保子が広く知れ渡るまえにやめてしまったのが、今となっては残念です。
最後に、河合奈保子のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 コントロール ★
2 デビュー ★
3 ハーフムーン・セレナーデ ★
4 涙のハリウッド ★
5 十六夜物語 ★
6 UNバランス ★
7 Invitation ★
8 けんかをやめて ★
9 微風のメロディー ★
10 ラブレター ★
★=80年代発売