80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.255
オレたちだけの約束 木村一八
作詞 DIAMOND HEADS
作曲 後藤次利
編曲 後藤次利
発売 1986年1月
出演ドラマも好調の中、親の七光りを十二分に活用して得たチャンスをものにして、ヒットにつなげたデビュー曲
子供のころから横山やすしの息子としてもてはやされ、名前もギャンブル好きの父親にちなんでつけられたということで話題にもなりました。1985年ぐらいから本格的に芸能活動を開始し、ドラマ「毎度おさわがせします」に主演すると、これはなかなのイケメンだぞと人気が上がり、ついにレコードデビューも果たしたわけです。そのデビュー曲が『オレたちだけの約束』でした。当時は若くて人気が出そうなイケメン君は、何がなくてもまずはレコードを出さなければというところが多かれ少なかれあって、その例にもれずに、木村一八もシングルデビューを決行したということでしょう。本人が歌に対して、どこまで意欲を持っていたのかはよく分かりませんが、結果的にそこそこ売れました。オリコン最高8位、売上11.1万枚という実績で、テレビの歌番組なんかにも登場し、まずは順調なデビューを果たしたといえるでしょう。
歌唱自体はお世辞にもうまいとは言えず、粗削りで粗野な歌い方ではありましたが、そもそも木村一八に歌唱力を期待している人などほぼいないわけで、その点からするとイメージを壊さない楽曲になっていたと思います。作詞のDIAMOND HEADSとなっていますが、この人物のことはよく分かりません。ただ作曲は後藤次利ということで、当時のヒットメーカーを起用しています。
楽曲自体はバイクを登場させて不良っぽいニュアンスを漂わせながらも、基本的には爽やかな青春ラブソングとして、無難な路線に落ち着かせています。二人でバイクを走らせる夜、二人の愛を確かめ合う的な、つまりは「内容はないよー」的なありきたり、いや王道の歌詞なのですよね。メロディーも爽やかですし。ま、楽曲の良さで売り出そうということはまずなかったでしょうし、曲はとりあえず何でも形になっていればなんどもいいやというところはあったでしょうね。いってしまえばアイドルのデビュー曲、話題性とキャラクターで勝負できるはずだからと。そして結果もほぼそのとおりになったということで、めでたしめでたしのデビュー曲だったわけです。
ところが問題はこの後でした。3か月後に出した2ndシングル『輝くおまえ』は最高25位、売上2.0万枚とセールスも激減。3rdシングル『漂流記』(1987年5月)はもはやトップ100のランク外。やはり話題性だけでは長く続きません。もっとも歌手業は彼にとってはおまけみたいなもので、本線は俳優業でしょう。ということで、ドラマや映画を中心とした活動に軸足を置いていこうとしていた矢先、事件は起こってしまいます。1988年11月に暴行事件が起きて逮捕され、大きな問題になってしまったのです。しかも父親までもが飲酒運転事故を起こしてしまう始末で大混乱。このあと木村一八は一度復帰を果たしますが、二度目の暴行事件を起こし逮捕。芸能界の中心からは完全に遠ざかることになってしまったのです。その後の彼の人生を知って改めて『オレたちだけの約束』を聴くと、なんか切ない気持ちになりますね。これを歌っていたとは、どんな輝く未来が待っているかと、希望を持っていたことでしょう…。そんな意味では、単なる二世アイドルのデビューソングとして以上の思いを抱かせるような一曲なのですよね。