80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.252

 

HURRY UP  湯江健幸

作詞 佐藤ありす

作曲 根岸孝旨

編曲 村松邦男

発売 19862

 

イケメン俳優兼歌手として期待され、宣伝費をつぎ込んでスマッシュヒット、中堅俳優として長く活躍する湯江タケユキのデビュー曲

 

 

 

 1985年俳優デビューした湯江健幸は、イケメン(当時はそんな言い方はなかったですが…)シンガーとしても大々的にそのデビューが宣伝され、1986年に『HURRY UP』で歌手デビューを果たします。このデビュー曲は森永アイスのCMソングにも起用され、結構な量でテレビを中心に流されました。またそれ以外にもテレビを使ったプロモーションも積極的に行われ、当時受験生だった私が、大学受験のためにやってきた某都市のホテルのテレビからも、コンサートかイベントだったと記憶していますが、ヘビーローテーション(これも今的な言い方ですが)CMが流されていたのを強烈に覚えています。それだけ期待され、主役を張れて歌も歌えるスターとしての将来像も、もしかすると描かれていたのではないでしょうか。そうしてリスされた『HURRY UP』はオリコン最高16位、売上6.8万枚と、そこそこのヒットとなったのです。

 

 この『HURRY UP』はタイトルとのとおりのテンポの良いシンプルなロックで、覚えやすくてかっこいい曲でもあり、これだけ何度も何度も聴かされると、いつの間にか覚えてしまうので、個人的にもよく口ずさんでいたものです。決して歌はうまいというわけではないのですが、粗削りでぞんざいな感じのボーカルが、この曲には不思議とマッチしていました。その疾走感あるリズムに乗った歌詞もまた、スピード感のあるものになっていて、いかにもこの年代のちょっと不良っぽい匂いのある男の子が唄いそうな歌詞になっています。よくいえば王道、悪くいえばありがちということにもなるのですが、バイクなのか車なのか、夜明けにガレージから出発。スコールの中を走り抜け、カーブをすり抜け、「おまえ」に気持ちをぶつけるために会いに行くという、まあ、いってしまえば、俺ってかっこいいだろう的な奴です。16位ならば、まあまあ上々といったところではなかったでしょうか。

 

 ただこれだけ大々的な売り出しをかけたのですから、きっと人気が上がるのだろうななんて思っていましたが、これ以後いまいちブレイクし切れなかったですね。歌の方はシングル4枚出して、早々と見切りをつけ、俳優業にシフトしていきます。3枚目『想い出のアニー・ローリー』(19869)ではかまやつしひろしが作曲、4枚目『トラブル』では自ら作詞作曲をこなすなど、音楽的にもいろいろなチャレンジをしていて、どこか懐かしさの漂う路線もなかなかよかったので、スパッと諦めたなぁという印象はありました。その後はテレビドラマの脇役として地道に活躍、華々しくデビューした頃を思うと寂しい感じを見るたびに持つのですが、それでも年齢相応の役で頑張っている姿には、不思議と応援したくなるのです。