80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.251
今だから 松任谷由実・小田和正・財津和夫
作詞 松任谷由実・小田和正・財津和夫
作曲 松任谷由実・小田和正・財津和夫
編曲 坂本龍一
発売 1985年6月
とにかくこの3人が揃っただけでも凄いという、夢の豪華メンバーによる企画ユニットの唯一のシングル曲
この大御所ばかり3人が一緒に組んでレコードを出したということがとにかく凄い、そんな一曲です。当然のようにレコードは売れて、オリコンシングルチャート首位を獲得し、36.7万枚を売り上げました。この作品、特にタイアップもついていなかったと思いますし、「一緒にやろう」というそれだけから始まったということで、かなり異色の作品といえるのではないでしょうか。もちろん大物アーティスト同士が組んで企画ソングをリリースするということは時折あるわけで、例えば同じ松任谷由実ならカールスモーキー石井と組んだ『愛のWAVE』があります。そのほか思いつくまま列挙してみると、忌野清志郎+坂本龍一『い・け・な・い・ルージュ・マジック』、佐野元春+渡辺美里『Home Planet 地球こそ私の家』、井上陽水+安全地帯『夏の終りのハーモニー』、桑田佳祐+Mr.Children『奇跡の地球』、GLAY+EXILE『SCREAM』などなど多数あります。ただ3者による企画ユニットというものは実はそんなになく、この『今だから』はその稀有な例といえるのかもしれません。
さて『今だから』ですが、作詞作曲は3者の共作となっていますが、実際には誰が中心となって作った詩であり、曲であるのか、気になるところではあります。話によると、ユーミンと小田和正二人で曲作りを進めていったということなので、おそらくどちらかなのでしょうね。ただ正直なところ、当時この曲を聴いた感想としては、偉大な3人が揃ったにしては、これか…というものはありました。だって、詩もメロディーも、そんなに面白くないでしょ。お互いに気を使い合うと、結局は無難な感じになってしまうのか、或いは傑作は自分のために残しておいて、とりあえず形にしておけばいいかという感じだったのか、それはよくわかりません。ただ自分の色をなかなか強くは出せないというところはあるのかもしれませんね。でも売れちゃうのですよね。
終わった愛を振り返りながら、過去には戻れないから、前を向いて進んでいこうというような回想的ラブソングですが、具体的な情景描写はほとんどなく、ほぼ心象描写で埋められています。そう考えると、ユーミンというよりは、小田和正が主体になってこの歌詞を作ったのかなという気はします。とすると、メロディーの方はユーミン主体かもしれません。オフコース的というよりも、ユーミンの要素の方が強いかな、そんな印象はありますし。で、財津和夫が少し手を入れたのかどうか。いずれにせよ、なにか印象的なフレーズがあるわけでもなく、お気に入りになるようなメロディラインが使われているわけでもなくというのが、やっぱり正直な感想なのです。そういえば、松任谷由実がカールスモーキー石井と組んだ『愛のWAVE』も、なんかあまりパッとしなかったですし。大物同士が企画的に組んで、抜群の作品ができるというのは、なかなか難しいことなのかもしれません。
この『今だから』は未だCD化されていないとも聞きます。オリコン1位クラスのヒット曲でCD化されていないというのは、実は珍しいケースらしいですが、これもまた大物同士のユニットという形に、ひとつ要因があるのでしょうか。