80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.250
ご期待下さい! うしろ髪ひかれ隊
作詞 秋元康
作曲 後藤次利
編曲 後藤次利
発売 1988年4月
『ひらけ!ポンキッキ』のテーマ曲ということで、子供たちに向けた明るくポジティブな楽曲は、うしろ髪ラストシングル
うしろ髪ひかれ隊はおニャン子クラブから派生した3人組のユニットで、メンバーは生稲晃子・工藤静香・斉藤満喜子の3人。3人ともうしろ髪ひかれ隊での活動を経て、ソロデビューを果たしています。うしろ髪ひかれ隊の最初のシングルは1987年5月発売の『時の河を越えて』で、オリコン1位を獲得し売上も二けた11.4万枚を記録しました。その後『あなたを知りたい』(1987年8月)、『メビウスの恋人』(1987年11月)、『ほらね、春が来た』(1988年2月)とさらに3枚のシングルを発売し、いずれもオリコントップ10にチャートインを果たしました。そんな中で5枚目のシングルとして発売したのが『ご期待下さい!』です。そしてこの曲が結果として、うしろ髪ひかれ隊としては最後のシングルになり、売上的にもオリコン最高12位と、初めてトップ10に届かないシングルとなってしまいました。ただその一番売れなかったシングルを、今回うしろ髪ひかれ隊の一曲としてとりあげたのは、個人的には一番この曲が好きだからです。
この曲は子供向け番組『ひらけ!ポンキッキ』のテーマ曲として起用され、したがって歌詞も子供を意識したものになっていますし、歌もとても親しみやすい明るい曲になっています。そもそもうしろ髪ひかれ隊のシングルは、3曲目までは3人の当時のキャラクターとはちょっとギャップがある、マイナー調の暗めの曲で、個人的にはあまり魅かれませんでした。ただ4枚目『ほらね、春が来た』で明るくポップな曲に転換され、オヤッ?と思わされたところで、さらに可愛らしい(といっても子供っぽいという意味での可愛らしさですが…)『ご期待下さい!』で、個人的には面白いなと思ってのですよね。ただこの時はすでに人気のピークも過ぎていて、工藤静香がソロ歌手としての人気を確立していたこともあり、ユニットとしての活動はもはや尻すぼみ。この曲も結果的には企画物的な扱いで終わってしまったのです。
さて『ご期待下さい!』ですが、それまでのシングルすべてと同様に、作詞が秋元康、作曲が後藤次利という、おニャン子勢にとっての黄金コンビによる作品となっています。この詩の主人公はまさに子供。子供目線で、お母さん、お父さんに向けた決意を歌った異色の歌詞なのです。ただ子供と言っても、どこか大人びた言いっぷりが独特で、これが
《僕はもう目が覚めた 生まれ変わって 目からウロコがポロポロ》
といった感じで、ある日突然目覚めると急に成長していた的な感じが、歌詞の中に現れています。
《今日というこの日を後悔しないで 生きてくことが大切さ》
とか
《そんなにいつまでも 子供のまんまで甘えてばかりいられない》
とか自分を見つめながら、
《お母さまを楽させたいな》《お父様を追い抜きたいな》
と両親に語り掛けているわけで、さらにそこに子供の声のコーラスが入ってきて、このあたりが子供番組のテーマソングたるところなのでしょうね。明らかに、それ以前のうしろ髪ひかれ隊の曲と比べて異質ですし、実際テレビなどでも歌われていないようなので、やはり企画物的な色合いが強かったのは間違いないでしょう。
そしてこの作品をもって、うしろ髪ひかれ隊としての役割を終え、ユニットは消滅。特に工藤静香にとっては、ほとんど必要のないものになってしまっていたのは、仕方ないところかもしれません。