80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.249
僕の腕の中で 杉山清貴
作詞 秋元康
作曲 林哲司
編曲 佐藤準
発売 1988年4月
ソロになって初めて林哲司と組んだシングルは、いかにも杉山&林らしい清涼感あふれる爽やかラブソング
1984年4月に杉山清貴&オメガトライブとしてデビュー、ヒット曲を連発しながら、7枚のシングルをもってわずか2年半で解散。しかしすぐに1986年5月『さよならのオーシャン』でソロとしてデビューした杉山清貴。袂を分けたオメガトライブもカルロストシキをボーカルに迎え、1986オメガトライブとしてほぼ同時期に再出発。双方ともその最初の曲が大ヒットということで、解散も結果的に大成功となって希少な例となったわけです。
ソロになってからの杉山清貴ですが、バンド時代のイメージとはあまりかけ離れることなく、延長上にある曲を歌っていた印象です。ですからバンド時代からのファンをしっかり掴んだまま、ソロにうまく移行したのではないでしょうか。シティとリゾートを舞台にしたラブソングは杉山清貴の得意とするところ、バブルに浮かれる時代、ドライブシーンやデートシーンにおけるBGM的な役割を果たすことも多く、『さよならのオーシャン』以降も、オリコンシングルチャートの上位に、曲を送り続けていました。
今回とりあげる『僕の腕の中で』はソロになって6枚目のシングルで、1988年JALイメージソングとして起用されたこともあり、オリコン最高2位、売上18.7万枚のヒットとなりました。もっとも3枚目シングル『水の中のAnswer』から『shade』『風のLONELY WAY』と3曲連続していたトップ1の記録は途絶えてしまうことにはなりましたが、それでも売上は『水の中のAnswer』『shade』を上回り、『風のLONELY WAY』とほぼ同じ枚数ということで、まだまだ杉山清貴の健在ぶりを示す形にもなったわけです。
ただこの『僕の腕の中で』は、ソロデビュー以後のシングル曲すべてが自身の作曲だったのが、バンド時代のすべてのシングル曲を作曲した林哲司を起用しています。まさに勝手知ったる間柄ということで、安心して任せられる部分はあったでしょうね。当然違和感などみじんもございません。これぞ杉山清貴、そんな曲に仕上がっています。ただ、7枚目『渚のすべて』以降は再度自身の作曲に戻っていますので、このシングルだけ林哲司に戻っているというところが、何か事情とか戦略とかあったのでしょうか。単純に原点回帰ということなのか、たまたまストックのこの曲にスポットが当たったということなのか…。
それはともかく、作品自体は実に杉山清貴らしい爽やかなラブソングです。
《夏の陽刺し》
《1番目の青空》
《雲ひとつないほど》
《僕と君の季節》
《胸の奥にきっと青空がある》
《銀の翼空へ》
と、スカッと心洗われるような爽やかワードにあふれています。杉山清貴の曲が「シティ」か「リゾート」の2つに分けられるとしたならば、『さよならのオーシャン』『水の中のAnswer』『渚のすべて』とともに、「リゾート」に分類される曲ですね。のちのインタビューなどを聞いても、音楽界における自分の役割を理解し、敢えてその路線を貫いていたようなところがあったように思います。カラオケで歌っていても、気持ちよく入り込めてしまうのですよね。この歌、好きです。
さて杉山清貴ですが、翌年1989年からセールス的には急激に下降していきます。1990年5月発売『いつも君を想ってる』の10位を最後に、シングルチャートのトップ10からは遠ざかっていき、ヒット戦線での役割を終えていき、拠点をハワイに移していくことになります。ただ今でも時折テレビで見ることもあり、その歌声が健在であることにはうれしく思うわけです。
最後に、杉山清貴(オメガトライブ時代含む)のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 君のハートはマリンブルー ★☆
2 最後のHoly Night ★
3 僕の腕の中で ★
4 サマー・サスピション ★☆
5 ふたりの夏物語 ★☆
6 アスファルト・レディ ★☆
7 水の中のAnswer ★
8 riverside hotel ★☆
9 渚のすべて ★
10 プリズム・レインに包まれて ★
★=80年代発売
☆=杉山清貴&オメガトライブ