80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.248
プライベートはデンジャラス 我妻佳代
作詞 谷穂ちろる
作曲 井上ヨシマサ
編曲 武部聡志
発売 1987年11月
やや遅きに失したソロデビューはおニャン子解散後、不遇感の強いおニャン子の唯一のトップ10入りシングル
1987年9月のコンサートをもって解散したおニャン子クラブ、そのメンバーとして活躍しながらも、ようやく果たしたソロデビューはおニャン子解散後ということもあり、不遇の印象が強かった我妻佳代。おそらくもっと早くおニャン子に入り、ソロデビューしていたら、オリコンの1位とか2位にはなっていたでしょうね。実の姉もアイドルとして活躍していた芹沢直美でしたが、個人的には、お姉さんよりもずっと可愛いルックスで、我妻佳代の方が圧倒的に好きでした。実際、そこそこ人気もあったのですが、なにせ所属していた母体は人気が低下しての解散でしたので、その流れの影響をもろに受けてしまったところは少なからずあるでしょうね。
そしてそのデビュー曲が『プライベートはデンジャラス』であり、オリコン最高9位を記録しています。作詞は秋元康ではなくて、谷穂ちろるなのですね。同じおニャン子メンバーの吉沢秋絵『流星のマリオネット』、南野陽子の奇曲『へんなの!!』などが主な作品です。この『プライベートはデンジャラス』はタイトルから受ける印象そのままで、この曲はポップで賑やかな曲になっていて、元気系アイドルにはぴったりです。我妻佳代も元気なイメージを前面に出していこうといった戦略だったのかもしれません。ただどちらかというと4枚目のシングル『悲しみの向こうがわ』(1988年10月)のような、切なさの感じられるしっとり系の曲の方が似合っていたように思います。まあ、『プライベートはデンジャラス』のようなはじけた曲も可愛らしくて悪くはないですけれどね。
歌詞をみると、実に変な歌です。
《チェッ チェッ チェッ チェンジできないハート チャッ チャッ チャッ チャントふたつ重ねて》
《過激 刺激 劇的》
《チョッ チョッ チョッ チョット照れていないで》
《チュッ チュッ チュッ チュット キッスはすばやく》
《微熱 加熱 熱愛》
《チェッ チェッ チェッ チェックキビシクしなきゃ》
…言葉遊びを多用して、言葉の響きで引き付けておいて、ガチャガチャしたメロディーにぴったりはまる、わちゃわちゃした歌詞。内容よりもとにかく雰囲気と言葉の響き、それを最優先にした歌詞です。可愛らしいといえばそうなのですが、曲で勝負するのを最初からあきらめて、歌い手本人のパワーだけで売り切ろうという感じにも思えます。ただおニャン子全盛期ならともかく、解散後でしかもデビュー最初の曲ということですと、それは結構なハンディだったように思います。この歌がいいから買おうなんて曲では、まずないですからね。せめて1年早かったらね…
結局、この曲は我妻佳代にとっては唯一のオリコントップ10入りのシングルとなり、以後は次第に順位を落としていきます。前述のように『悲しみの向こうがわ』といったいい曲も、多くの人の耳に届かないまま、我妻ちゃんは1年半後1989の4月に芸能界を引退していくのでした。