80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.245
大輔・哲太のRock’n Roll 嶋大輔・杉本哲太+1
作詞 翔
作曲 翔
編曲 若草恵
発売 1983年1月
銀蝿ファミリーの弟分たちの企画ユニットによる自虐的コミックな掛け合いが楽しいコミカルなロックンロール
当時勢いに乗っていた横浜銀蠅一家。本体だけでなく、銀蠅ファミリーとしても、嶋大輔、紅麗威甦、杉本哲太&LONELY RIDERS、岩井小百合と精力を広げ、まさにこの世の春を謳歌(?)していた1983年初頭、弟分の嶋大輔と杉本哲太がユニットを組んで、企画もの的にリリースしたのが、今回取り上げた『大輔・哲太のRock’n Roll』です。ちなみに「+1」とあるもう一人のメンバーは矢吹薫でして、デビュー前ということで「+1」扱いになったのでしょう。この半年後にめでたくソロデビューを果たしています。
そもそも嶋大輔はこの前年1982年にデビューし、『男の勲章』をはじめ、出す曲すべてがチャートのトップ10入りを果たしていましたし、杉本哲太も1982年紅麗威甦のメンバーとしてデビューし『ぶりっこRock’n Roll』がヒット。その勢いある二人と、これから売り出そうとしている若手を入れて、さらなる旋風(?)を目指してリリースしたのが『大輔・哲太のRock’n Roll』だったです。そしてまたこの曲が、ツッパリで鳴らした横浜銀蝿だけに、その路線でくるのかと思いきや、なんとこれがコミックソングだったのです。もっとも、横浜銀蝿の『ツッパリHigh School Rock’n Roll』シリーズも不良を主人公にしたコミックソングですから、ある意味ファミリーにとってはお得意の路線だったともいえるかもしれません。
ただそれにしても 『大輔・哲太のRock’n Roll』は冴えない、ダサい主人公たちなんですよね。タイトルからしてもふざけているというか、どこからどうみても、かっこよくは思えないですよね。実際の歌詞の内容はさらにカッコ悪くて、明らかにもてそうもない二人の男が掛け合いしながら…、お互いがお互いをけなしながら…、しょーもない争いをしながら…、最後は自虐的なオチで終わるというもので、ツッパリとか不良とか暴走族とか、そんなかけらは一切ありません。
《俺達がいきつけてた 坂道にある喫茶店に 今度来たいかしたウエイトレス》
と、二人のもてない薫は、同じ女の子に恋してしまいます。
《とっぽくてハニー 胸元Sexy マブいぜ彼女 イチコロだぜ 愛してI love you》
と、このあたりに銀蝿っぽいツッパリ少年ワードが使われています。ちなみに作詞は銀蝿の翔です。そんな彼女をめぐって、
《ほとんどビョーキさお前は》
《お前よく言うぜ ホンキかよ》
などとお互いをけなし合っているのですが、結局は
《ところがある日 彼女を偶然みかけた街角 ちょっと二枚目の男と 腕組みながら歩いてるなんて》
と、二人の恋ははかなくも散ってしまうことになるのです。その結果が
《お前 ホレてたの? お前もホレてたの? ほとんどビョーキさお前は》
《お前 片想い! お前も片想い!まったくビョーキだぜ》
と相変わらず、お互いを笑い合って終わっていくという、まー、どっちもどっちという、ふられ男を笑ってやろうといった歌なんですよね。
このように、楽しいけれどどこか失笑したくなるような『大輔・哲太のRock’n Roll』は、オリコン最高6位、売上14.6万枚と、そこそこのヒットとなったのです。ただこれを境に二人の人気は下降していき、二人にとっては最後のトップ10入りシングルとなったのです。もっとも二人は活躍のフィールドを変え、特に杉本哲太は俳優として多くの作品に出演し、今では元銀蠅一家であることなど、みじんも感じさせない名優になっています。そんな未来を、当時は想像することは全くできなかったですね。