80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.242

 

バレンタイン・キッス  国生さゆり

作詞 秋元康

作曲 瀬井広明

編曲 佐藤準

発売 19862

 

 

 

30数年経過してもなお、バレンタインデーには真っ先に流される定番曲に!そんな未来を知る由もない、人気おニャン子のデビュー曲

 

 クリスマスの歌ならば、山下達郎、B‘z、ワム!、ユーミン、稲垣潤一、マライヤ・キャリー、辛島美登里、新しいところではback numberなどなど、必ず流される定番曲といっても、枚挙にいとまがありません。ところがバレンタインの歌というと、未だに真っ先に使われるのが国生さゆりの『バレンタイン・キッス』なのです。あとはせいぜいPerfume『チョコレイト・ディスコ』ぐらいでしょうか。『バレンタイン・キッス』は渡り廊下走り隊7なんかにカバーもされていますしね。これって、すごくないですか?発売されたのが1986年、そこからどれだけの年月が経過しているのでしょうか。未だに、『バレンタイン・キッス』を超えるバレンタイン用のイベントソングが現れていないのです。恐るべし『バレンタイン・キッス』。

 

 もちろん発売当時は、将来この曲がバレンタインの定番曲になろうだなんて、作り手も歌い手も聴き手も思いもしなかったでしょう。おニャン子ブームに乗って、人気メンバーを順番にソロデビューさせ一儲けするという、その流れの一環でしかなかったはずです…、おそらく…。河合その子、吉沢秋絵、新田恵利と続いての国生さゆりでしたが、お世辞にも歌は上手だといえませんし、たまたま2月発売だから、バレンタインの歌にしてしまえ、ぐらいだったのではないでしょうか。ところが、ところが、いつまでも残る曲になってしまったのですよね。

 

 で、この『バレンタイン・キッス』ですが、作詞はおニャン子クラブお抱え(?)の秋元康で、作曲は瀬井広明。瀬井広明というのは、あまり歌謡界にはなじみがなくて、ヒット曲もこの曲ぐらい。まさに一世一代の作品になったといっても過言ではないでしょう。今でも印税とか、結構な額が入ってくるのではと、品のない想像もしてしまいます。歌詞の方は、まあいかにもアイドルの女の子らしい、たわいのないラブソングで、いわゆる『プレゼントはあ・た・し』的な内容になっています。リボンをかけた私の唇がバレンタインの贈り物よ、ということですね。たまにあります、この手の『あたしをあげる』的なアイドルソングですが、その中でもかなり堂々と言っちゃってる感じですね。もっとも唇をあげると宣言している分、それ以上の想像はさせないところで、セーブしているとも捉えることはできます。

 

 それにしても、クリスマスと比べて、バレンタインの歌はどうしてあまり作られないのでしょうか。前述以外だと、せいぜいSKE48『チョコの奴隷』とかUP-BEATRainy Valentine』とか…、ちょっと弱いですね。もう『バレンタイン・キッス』の独占状態が30年以上続いているテリトリーなんですね、214日は。そしてそのおかげで、国生さゆりにとっては、自らの代名詞になったわけですから、この曲を国生さゆりに歌わせたということ、歌ったということは、彼女にとっても人生に関わる大きな事件であったといえるでしょう。ちなみにオリコンの最高位は2位、売上は31.7万枚でした。

 

 その後国生さゆりは7枚目のシングル『恋は遠くから』(198710)までオリコントップ10入りを果たし、中でも『夏を待てない』(19865)『ノーブルレッドの瞬間』(19868)『あの夏のバイク』(198612)3曲で1位を獲得します。ただその後はおニャン子クラブ全体の人気の下降、そして解散とともに、ヒットチャートからは遠ざかっていきました。ただ国生さゆり自身は、いろいろありながらも、長く芸能界で活躍し続けているわけで、そのベースにはやはり『バレンタイン・キッス』の存在が大きいのだろうななんて思ったりもするわけです。