80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.241

 

永遠のうたたね  小川範子

作詞 川村真澄

作曲 山川恵津子

編曲 萩田光雄

発売 19883

 

 

 

14歳とは思えない堂々とした歌唱力と15歳らしい可愛らしさの同居した子役出身アイドルによる、せつなさが響く恋愛ソング

 

 1986年に後藤久美子が女優デビュー、翌年歌手デビューすると、1980年代後半から1990年代初頭にかけて日本の芸能界に「美少女ブーム」と呼ばれるムーブメントが巻き起こります。ポスト後藤久美子ということで、10代前半の女の子たちが、続々とデビューし、音楽チャートでも上位に顔を出すようになります。坂上香織、小川範子、藤谷美紀、宮沢りえ、観月ありさ、牧瀬里穂、一色紗英、桜井幸子と続く流れの中で、1988年~1989年を中心に台頭してきたのが小川範子だす。

 

 もっとも小川範子自身は6歳の子役から活躍していて、ブームに乗ってぽッと出てきたわけではないのですが、このブームの中でスポットが当たり、アイドル的な存在としてクローズアップされてきたわけです。デビュー曲は198711月発売の『涙をたばねて』で、オリコン最高13位とまずまずの順位を確保しています。当時14歳ではありましたが、すでにキャリアが長かったおかげでしょうか、どこか落ち着いた雰囲気があり、もっというと大物感さえ漂っていました。ルックスも整っていましたが、けっして大人びた雰囲気ではなくあどけなさも残り、そのアンバランスな感じが、小川範子の魅力でもあったように思います。

 

 ただやはり子役女優としてのイメージが強く、キャピキャピ、ブリブリといった路線は似合わないということで、シングル曲は暗めのマイナー曲を中心に選んでいました。『涙をたばねて』に続く今回取り上げた2ndシングル『永遠のうたたね』も、デビュー曲の路線を引き継ぐような曲調の歌でしたし、この路線はこの後も3rd『こわれる』(19887)4th『ガラスの目隠し』(198811)5th『桜桃記』(19893)まで続いていきます。小川範子の場合は、他の美少女アイドルたちと比べて歌唱力もあったため、ちゃんと聴かせられることができる分、こういったマイナー曲で勝負できたというのもあるのかもしれません。

 

 さて『永遠のうたたね』ですが、この曲はオリコン最高12位と、まだトップ10入りは果たせていませんが、個人的には小川範子の中で一番好きだという理由で、ピックアップした次第です。作詞は、小川範子の多くの楽曲を手掛けた川村真澄。作曲は曲によっていろいろな作曲家を起用していますが、今作は山川恵津子。他の手掛けたヒット曲としましては、渡辺満里奈『ホワイトラビットからのメッセージ』、小泉今日子100%男女交際』、酒井法子『イヴの卵』、立花理佐『キミはどんとくらい』などがあります。『永遠のうたたね』も曲調はけっして明るいメロディではなく、歌詞も好きな相手に対しての一途な思いが届かない気持ちを歌ったせつない内容になっています。《いつも送ってくれた》り、腕を《ずっと背中にまわしてた》りと、友達以上の関係であることは想像できるのですが、《電話くれない》《つけた口紅あなたは何も気づかなかった》《約束しない》と、けっして相手からは行動してこない虚しさ切なさ…。《けなして欲しくてつけた口紅》《たとえば雨の夜でも 呼び出してくれたら どこでも行く》あたりは、初めての恋に背伸びしたがる14歳の女の子の行動として等身大に描かれていると思います。けっして派手な歌ではないのですが、ちゃんと鑑賞に耐えられる、ちゃんとした歌になっていて、私は好きでした。

 

 このあと小川範子は『こわれる』でオリコン最高6位と初のトップ10入りを果たすと、7th『無実の罪』(198911)まで5曲連続でトップ10入りを果たし、この頃がアイドルとしてのピークだったといえるでしょう。ドラマでは「はぐれ刑事純情派」に長く出演し、女優としての活動を主軸にしていくのですが、一方で早稲田大学にも入学し、学業とも両立。どうも彼女は、芸能界での仕事に対し、あまり欲がないように感じられたのですが、実際どうなのでしょうか。結婚すると、ほとんど芸能界の仕事もやめてしまったみたいですし…。もし小川範子が芸能界の仕事に対してもっとどん欲だったら、女優として大きな存在になったような気はするのですけれどね…。この歌唱力、表現力を考えると、本当にもったいないと思ってしまうのです。