80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.240
JINGI・愛してもらいます 中山美穂
作詞 松本隆
作曲 小室哲哉
編曲 大村雅朗
発売 1986年7月
ちょっと上から目線の感じがまたミポリンらしい、小室哲哉作曲のアイドル全開ソング
中山美穂は1985年6月『C』でデビュー、正統派の可愛い系アイドルというよりは、美形のクールなツッパリ系のアイドルとしての戦略に乗って、さまざまなプロモーションが行われました。ドラマや映画でもそんなイメージに沿った役柄が多く、ドラマでは「毎度おさわがせします」「夏・体験物語」「セーラー服反逆同盟」、映画では「ビー・パップ・ハイスクール」などで、初期の中山美穂のイメージが植え付けられていきました。歌手としても『C』、『生意気』(1985年10月)、『BE-BOP-HIGHSCHOOL』(1985年12月)など、年齢の割にませた感じの女の子の路線をまずは進んでいった印象でしたね。
やや路線を変更してきたのが4thシングルの『色・ホワイトブレンド』(1986年2月)で、このあたりから正統派のアイドル的に匂いも取り込んでいくことになります。1986年から1987年の序盤にかけては、そんなアイドル的な可愛らしさを打ち出した曲を連発していったわけですが、今回取り上げた『JINGI・愛してもらいます』は、そんな流れの中での6thシングルになります。この6枚目のシングルは、実は作曲が小室哲哉で、渡辺美里のヒットで注目され始め、アイドルを中心に曲の提供が少しずつ増え始めた頃の作品ですね。中山美穂へのシングル曲での提供は、1987年7月発売の『50/50』とこの曲の2曲ですが、『50/50』がややアダルトでアーティスト色も感じられる曲であったものに対し、『JINGI・愛してもらいます』はアイドルど真ん中といったポップなメロディーで耳なじみのいい曲となりました。
そして作詞がデビュー曲以降、前述の『色・ホワイトブレンド』を除いたシングル曲に携わってきた松本隆。いくらアイドル路線といっても、奥手で受け身な女の子は中山美穂に似合わないということで、どこか上から目線的なニュアンスのある詩になっていて、このあたりはちょうどよい塩梅なのかもしれません。なんといっても相手の男のコのことを
《コラ少年、聞いてるの?》
《少年、お姉さんに誓うのよ》
《少年、お姉さんもせつないわ》
などと“少年”呼びしているのですよね。そして自分のことは“お姉さん”ですから。おそらく年下と思われる相手に対し「私の方が経験豊富ですし、ちょっとのことでは傾かないわ、誠意を見せて落としてごらん」的な感じが、作品じゅうに現れているのです。そしてそれがまた中山美穂のキャラクターにもぴったりくるわけで、まあ、このあたりは巧みですよね。
この上から目線的な中に実は純情な可愛らしさも見え隠れする路線が、『クローズ・アップ』(1986年5月、オリコン4位)、『JINGI・愛してもらいます』(オリコン4位)、『ツイてるねノッてるね』(1986年8月、オリコン3位)、『WAKUWAKUさせて』(1986年11月、オリコン3位)、『派手!!!』(1987年3月、オリコン2位)と続くことになり、これによって中山美穂の人気は不動のものになっていってのです。オリコンの最高順位もじわじわと上がっていきましたしね。特に1986年は12インチシングル『WAKUWAKUさせて』(1986年12月)を含めると、6枚もシングルを発売していて、まさに怒涛の攻勢。とにかく中山美穂の勢いを感じた1年だったのです。
その中での『JINGI・愛してもらいます』は、前後と比較して特に売れたわけでもありませんし、タイトルもどこか企画ものっぽさを感じさせますし、中山美穂の歌の中でも忘れられがちな一曲なのかもしれませんが、アイドル中山美穂の勢いと「らしさ」を感じる作品として、私自身は大好きな一曲となっているのです。
その後は今更いうまでもなく、女優としても歌手としても、時代を代表する存在に成長していくわけで、歌も演技も決して器用なタイプではないものの、稀有な存在感によって、歌でも映画でもドラマでも、ヒット作品を世に送り出していったのです。
最後に、中山美穂のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 JINGI・愛してもらいます ★
2 色・ホワイトブレンド ★
3 Rosa
4 50/50 ★
5 派手!!! ★
6 遠い街のどこかで…
7 世界中の誰よりきっと
8 愛してるっていわない!
9 クローズ・アップ ★
10 幸せになるために
★=80年代発売