80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.239
その後で殺したい SHOW-YA
作詞 秋元康
作曲 筒美京平
編曲 松下誠
発売 1987年1月
稀代のヒットメーカーコンビ作詞作曲によるインパクト絶大な楽曲は、ガールズバンドの本格的な台頭へ狼煙をあげる一曲に
1980年代終盤から1990年代初頭、それまで鳴りを潜めていた女性バンドたちが、ようやくヒットチャート上位にこぞって登場することになります。今回とりあげるSHOW-YA、未だに彼女たちを超える女性バンドが日本には出現していないといえるプリンセス・プリンセスをはじめ、GO-BANG’S、PINK SAPPHIRE、NORMA JEANなどが台頭し活況を呈しました。その後現在に至るまで、ZONE、WHITEBERRY、チャットモンチー、SCANDAL、SILENT SIRENなどがヒットチャート上でも活躍しましたが、その礎を築いたのが、SHOW-YAであり、プリンセス・プリンセスだといえるでしょう。ひとつのガールズバンドブームといえる状況にあったのがこの時代で、彼女たちの台頭の兆しの一曲となったのが『その後で殺したい』だったと思います。
当時のガールズバンドの中でも、とびきりハードな路線を貫いていたのがSHOW-YAです。いかにハードロッカー然としたファッションとメイクのメンバーたち、そして迫力ある寺田恵子のボーカル、そしてそれらにマッチした重厚なサウンド。ちょっと聴いたところでは、なかなか一般受けはしないだろうなと思わせる世界観ではあったのですが、当時はようやくそういった「ど」・ロック系の歌も受け入れられつつある環境になってきた頃でもあったのですね。ガールズバンドが活躍しそうな雰囲気の芽生えを感じさせた『その後で殺したい』は、オリコン最高32位、売上2.6万枚とヒットとまではならなくても、着実に浸透してきていたのです。
そして驚くべきことは、この歌の作詞が秋元康、作曲が筒美京平であったことです。売れ線歌謡ポップスを次々に送り出していた二人ですが、まさかSHOW-YAの楽曲も手掛けていたのですね。そんなことから、ヒットに繋げたいという思いはあったのでしょうね。とにかくタイトルのインパクトがまず絶大。ミステリー小説やサスペンス映画のタイトルならまだしも、普通に発売されたシングルレコードのタイトルが『その後で殺したい』ですから、それだけで「どんな曲だろうか」と興味をひくことは間違いありません。実際、私もオリコンランキングにこのタイトルを見つけ、いったいどんな曲なんだと、当時まだアナログ盤だったレコードを買ってしまいましたからね。確か、ジャケットには写真もなく、いったいどんな人たちが歌っているものなのかと、想像を膨らませたものです。
歌詞でもサビで
《その後で殺したい 愛を独り占めしたいだけ 迷惑なやさしさで あなたの舌を噛んであげる》
と歌い、まるで映画の中のサイコパス悪女のような描写がみられます。そして大サビでは
《殺したい 殺したい 殺したい 殺したい》
の連呼に続き
《もう誰にも渡さないわ 心臓が止まれば 私だけのあなたよ》
と、もうここまでくれば狂気の愛です。このようにタイトルだけでなく、歌詞もインパクト絶大なこの曲で、SHOW-YAのハードなイメージが固められていったのでしょうね。
この2年後の1989年2月に発売された『限界LOVERS』でついにSHOW-YAはブレイクを果たし、オリコン13位、売上15.1万枚と飛躍的に売上が伸ばすに至ります。以後『私は嵐』(1989年6月)が12位、『叫び』(1990年3月)が12位、『ギャンブリング』(1990年9月)が15位と、連続してトップ20入り果たし、ガールズバンドの中核バンドとして、バンドブームを支えていくことになるのです。プリンセス・プリンセスやGO-BANG’Sなどポップな曲もこなす他のガールズバンドとは違い、一般受けの難しい路線で徹底していたので、大ヒット曲は生まれませんでしたが、それでも今でも日本音楽界を彩った代表的なガールズバンドの一つとして挙げられ続けているということは、やはり相当の存在感であったことは間違いないでしょう。