80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.236
なめんなよ 又吉&なめんなよ
作詞 又吉
作曲 又吉
編曲 PELORIAN
発売 1981年11月
なめ猫ブームに乗っかり、猫がバンド組んで歌っている体で発売された企画ソング
世の中ツッパリブームで、社会的には校内暴力や暴走族が大流行。金八先生がドラマの中ではツッパリと向き合い、音楽界では横浜銀蝿が人気を呼び、そのツッパリブームがついに猫の世界にまで及んできたのが、このなめ猫ブーム。日の丸の鉢巻きに、長ランを前ボタンをしめずに羽織り、スケ番猫のガールフレンドをしたがえて、「なめんなよ」の旗を持って写真に写る、そんななめ猫のグッズが大人気。そしてとうとうレコードまで発売してしまったというのが、この『なめんなよ』でした。なんとオリコン最高5位、売上25.5万枚とこれがヒットしてしまうのですから、当時のブームは凄かったのです。
もちろん猫が歌を歌えるわけがなく、猫のバンドの体で、人間が歌っているわけです。ただし歌詞は猫が歌っている体になっていて、作詞作曲も又吉という猫が作っていることになっていて、とにかく徹底してキャラクターづくりをおこなっていたわけですね。
《オレたち猫ダチ大集合 メザシ横丁 交差点 背中でスケネコすがりつき》
《いきなキャットテールのミケ子》
《やっといとめたシャムネコも ほんの3日で Good bye Love》
《今日もカツブシレストラン ミケ子にタバコは似合わない》
《恋はまたたびMISTERY》
と、歌詞は猫の要素だらけ。そして《なめんなよの心得》が唱えられるに至っては、いやはや。
《1つ 人間からえさをもらうべからず 1つ またたびの吸いすぎに気をつけるべし 1つ ワン公のようにやたらシッポをふるべからず 1つ グリースはひげ以外にぬるべからず 1つ 「ニャーゴ」と鳴くな「ニャン」と鳴け 1つ なめられたら なめかえすべし》
という心得。まあ作詞した人も、いや作詞した猫もよく考えたものです。後にも先にも人間以外の動物が歌っている体で、歌詞もビジュアルもすべて徹底し切って、そしてヒットに結びつけたという楽曲は、この『なめんなよ』意外にないでしょう。実際にみの歌に携わったミュージシャンが、その話題性をもって後にブレイクしたということもなく。日陰の身のままで終わってしまったのもまたせつないものです。
とにかくそれだけ当時のなめ猫ブームの人気はすごかったということでしょう。今の時代、作られたキャラクターグッズが人気を呼ぶということはあるでしょうが、そのキャラクターが歌う体で発売されたシングル曲が、ヒットチャート上位を席巻するということは、まず考えられません。まさにこの時代ならではのヒット曲だったといえるでしょう。
さて、実は又吉&なめんなよは、調子に乗って2ndシングル『おちょくっとんなよ』(1981年12月)に発売しています。調子に乗ってというのは、『なめんなよ』の発売からわずか1か月後に発売されたことをみれば一目瞭然。ブームが絶頂の内に、売れるだけ売ってしまえということだったのでしょうが、残念ながら『おちょくっとんなよ』はオリコン最高74位、売上1.7万枚という散々な結果でおわってしまいます。結局は企画のインパクトだけだったのでしょうね。同じことをもう一回やっても、飽きられてしまうだけ。楽曲の良さで売れたわけではないのですからね。それでも猫バンドがオリコンチャートのトップテンを賑わしたということは、音楽界に事実として残ったわけですから、それだけでOKでしょう。