80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.233

 

サレンダー  長島ナオト

作詞 長島ナオト

作曲 長島ナオト

編曲 杉山卓夫

発売 19871

 

 

 

疾風のように現れそして消えていった、クールなイケメンアイドル・ミュージシャンによる、2枚目にして最後のシングルになったカッコいい一曲

 

 1985年にテレビドラマでデビューし、翌198610『ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー』でシングルレコードデビューを果たした長島ナオト。高校時代からハードロックバンドを組んで活動し、自ら作詞作曲も行うミュージシャンでありながら、アイドルとしても通用するルックスと、どこか謎めいて尖がった雰囲気が、大型新人として期待せるには十分な素質を持っていたことは間違いないでしょう。ただ事務所の売り出し方がどちらかというとアイドルよりであったことも確かで、そのあたりで本人の思いとはずれていたみたいです。ティーン向けのドラマに出演したり、写真集を出したり、バラエティ番組に出たりと、ルックスを武器にして人気を得ようという展開が前面に出ていました。当時は雑誌やテレビCMなどでも長島ナオトを見かけることも多く、どこまで昇っていくのだろうと思ったりしたものです。

 

 デビュー曲『ダンス・ウィズ・ア・ストレンジャー』はオリコン最高29位、売上3.3万枚という実績を残し、それに続いてリリースした2枚目であり最後のシングルが『サレンダー』でした。デビュー曲同様に自らが作詞作曲したこの曲は、なかなかカッコよくて、本人のキャラクターにマッチした曲に仕上がっていました。歌うときは黒っぽいファッションに身を包み、髪型はばっちり決め、切れ長の目線でクールにカメラを見つめ、まあいってしまえばナルシストっぽい雰囲気はありました。それが本人の趣向によるものなのか、事務所の作戦によるものなのかは分かりませんが、当時のバンドのボーカルによくありそうな雰囲気だったかもしれません。事務所としては、吉川晃司をさらに尖がらせた感じを狙っていたのかなとも思います。最初はアイドル的に売って知名度を広げてから、アーティスト性を強めていき的な。でも、早いうちから本人がその方向に嫌気がさしたのでしょうね。『サレンダー』はオリコン最高22位、売上2.9万枚という結果でした。

 

 メロディメーカーとしては、正直もっと色々な曲を聴きたかったです。リズム重視で平坦なメロディーだったデビュー曲に比べて、サレンダーはメロディーもキャッチーで、歌っているとどんどん気持ちよくなる、そんな曲でした。歌詞の方はよくある傷心ラブソングなのですが、それでも頑張って背伸びしながらも書いてるなという印象。ただミュージシャンとしての長島ナオトに足りなかったのは、もしかすると歌唱力だったかもしれません。鼻にかかった独特の声を生かすために、そしてアーティストとして堂々と勝負するために、もう少し歌唱力があれば違った結果になったのでしょうか。わかりません。

 

長島ナオトは、この『サレンダー』がリリースされたこの年に、芸能界から引退してしまうのです。あっという間に現れて、あっという間に去っていった長島ナオト。このまま事務所に逆らわずに続けていたら、大物になっていたのでしょうか。約2年で消えてしまうには、惜しい存在感ではありました。