80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.230
ナーバスにならないで 勇直子
作詞 秋元康
作曲 松尾一彦
編曲 西平彰
発売 1986年10月
ライバルたちとの激しい競争の中、名前通りの勇ましい雰囲気で勝負をかけた、かっこいい系アイドルのセカンドシングル
1985年から1987年ごろにかけては、グループアイドル全盛となる前の、女性ソロアイドルの最後の激戦期間でした。次から次へとデビューしてくる新人女性アイドルたちでしたが、松田聖子からの系統であるぶりっこ可愛い系と、中森明菜からの系統ツッパリクール系に、大きく分けられていたように思います。その後者の中から台頭してきたのが中山美穂であり、その中山美穂に続けとばかりに、たくさんのアイドルがまた登場してきて、賞レースやオリコンのチャート上位へのランクインを争っていたのです。
そんなツッパリクール系のアイドルたちが知名度を上げていくためのマストの仕事が、当時の中高生をターゲットにした思春期ドタバタドラマへの出演でした。中山美穂が「夏・体験物語」「毎度おさわがせします」のシリーズに出演したことをきっかけにブレイクをしたということがまず大きいでしょう。両シリーズからは網浜直子、藤井一子、芹沢直美、志村香、勇直子、立花理佐、真弓倫子ら多数のアイドルが出演し、次のスターを目指していたのです。その他にも相楽ハル子、杉浦幸あたりも同じ系列にいれていいでしょう、とにかく少ない椅子を大人数で争うような状態で、それぞれがどう個性を出していくのかが、とても難しかったのではないでしょうか。
そんな中で勇直子は、可愛いというよりもかっこいいという、キリリとしたイメージのキャラクターで売り出していた印象です。なんといっても名前が「勇(いさむ)」ですからね。デビュー曲『センターラインが終わるとき』(1986年7月)もそんな彼女のイメージに合うような歯切れのよいスピード感のある歌で、オリコン最高32位、売上2.5万枚という成績でした。今回取り上げた『ナーバスにならないで』は、デビュー曲と同じ系統のテンポのあるかっこいい曲で、このあたりはブレがないですね。3rdシングル『さよならは落ち込まないで』(1987年2月)も含めて、売り出そうとする方向性はわりと一環としていたように思います。ただセールス的にはオリコン最高46位、売上1.2万枚と奮いませんでした。個人的にはこの2ndシングルが一番好きでして、特に作曲の松尾一彦がわりといいメロディーを作るのですよね。小田和正の影に隠れて目立ちませんが、メロディメーカーとしてもっと評価されてもよかった人だとは思います。
ただ歌詞をみると、17才という年齢にしては、背伸びした感はあったかもしれません。ルックス的には可愛い系というよりも美形で大人びたところはあって、曲の方向性としてはけっして違和感はなかったのですが、アイドルとして売り出さないといけなかったのは、そもそもちょっと厳しかったのかもしれません。勇直子はその後大きく羽ばたくことなく、数年で引退してしまいます。そしてジュンスカの宮田和弥と結婚することになるわけです。