80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.228

 

くちびるヌード  高見知佳

作詞 EPO

作曲 EPO

編曲 清水信之

発売 19842

 

 

 

バラエティ番組中心に活躍していた売れないアイドル歌手にとって、最初で最後のヒットとなった化粧品CMソング

 

 高見知佳は1978『シンデレラ』でアイドル歌手デビューしましたが、セールス的には鳴かず飛ばず。筒美京平、馬飼野康二、加藤和彦、竜真知子、鈴木キサブロー、秋元康と数々のヒットメーカーの力を借りても、まったく売れませんでした。なんと1983年までに計14枚のシングルを発売しましたが、オリコントップ100にすら入ることはありませんでした。もっとも全く売れなくても14枚のシングルをリリースできたということは、逆にすごいことでもあり、そこには歌は売れなくてもそりなりに露出があり、知名度は高かったという状況はありました。まだ「バラドル」という言葉が生まれる前の時代ではありましたが、バラエティ番組でのトークが受けて、わりと重宝されていたように記憶しています。

 

 そんな売れないアイドル高見知佳が、突如としてヒットチャートに現れたのが、15枚目のシングル『くちびるヌード』でした。この曲はなんと資生堂化粧品春のキャンペーンCMソングに起用されたのです。当時の化粧品キャンペーンソングの力は絶大で、起用されたらまずヒットは間違いないという時代、彼女にとってはそれまでにない最大のチャンスとなったわけです。しかも作詞作曲がEPOということで、EPO自身前年の1983年に資生堂春のキャンペーンCMソング『う、ふ、ふ、ふ』がヒットし、その縁での作詞作曲ということになったのでしょう。

 

 この『くちびるヌード』は春らしい爽やかな曲で、コピーも印象に残り、化粧品のCMには合ってはいます。ただ化粧品のCM曲としては、ややキャッチーさに欠けるのが難点で、歌詞の中にもそのものずばりで「くちびるヌード」というワードが使われていないのです。

《勇ましくヌードのくちびる》

《悩ましくヌードのくちびる》

という表現で使われてはいるのですが、ヒットした多くの化粧品ソングって、CMのキャッチコピー=タイトル=サビのフレーズと3者が一体となって聴覚に印象付けて、大ヒットに結び付いているんですよね。『赤道小町ドキッ』『春咲小紅』『君のひとみは10000ボルト』『吐息でネット』『い・け・な・い・ルージュマジック』『う、ふ、ふ、ふ』『How Many いい顔』『セクシャルバイオレットNo.1…と挙げればきりがありません。この点で『くちびるヌード』はちょっと弱かったのかもしれません。オリコン最高16位、売上10.4万枚という、そこそこ売れたけれど大ヒットまでには至らなかったというのは、サビのメロディと言葉の弱さも影響していたかなとは思います。

 

 ただ高見知佳にとっては、ようやく出たヒット曲でもあり、大きな力にはなったでしょう。そして唯一のオリコントップ100入りのシングル曲にもなったのです。その後は情報番組の司会などで活躍しましたが、いつの間にかテレビの世界から消えていってしまいました。