80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.226

 

晴れ、ときどき殺人キルミー  渡辺典子

作詞 阿木燿子

作曲 宇崎竜童

編曲 萩田光雄

発売 19844

 

 

 

角川3人娘の3番目、自らの主演映画のテーマソングを自らが歌唱するスタイルを継承したセカンドシングル

                                  

 当時、角川映画が売り出そうとした新人アイドル女優3人が、俗に角川3人娘と呼ばれていました。最初が薬師丸ひろ子、2番目が原田知世、そして3人目に登場したのが今回取り上げる渡辺典子です。いずれも主演映画と同じタイトルの主題歌を自ら歌うスタイルで売り出し、映画も歌も小説もそして本人もヒットさせようという一石四丁を狙った戦略で、話題を集めてきました。薬師丸ひろ子『セーラー服と機関銃』『探偵物語』『メインテーマ』、原田知世『時をかける少女』『愛情物語』『天国にいちばん近い島』などいずれも映画、主題歌ともヒット、3匹目のドジョウということではないでしょうが、渡辺典子にも大いに期待が寄せられたことでしょう。

 

 渡辺典子のデビュー曲は19841月発売の『少年ケニヤ/花の色』のいわゆる両A面のシングル。『少年ケニヤ』は角川のアニメ映画の主題歌、『花の色』は松田優作主演TBS系ドラマ「探偵物語」主題歌ということで、渡辺典子自身の主演作ではなかったのですが、オリコン最高9位、売上23.0万枚と、シングルチャートトップ10入りのヒットとなりました。そして角川恒例の主演映画+主題歌のパターンで最初に挑んだのが、2枚目のシングル『晴れ、ときどき殺人』だったのです。ただ薬師丸ひろ子、原田知世の勢いに比べると渡辺典子はちょっと地味で、結果このセカンドシングルはオリコン最高11位、売上15.8万枚にとどまりました。それでもテレビのランキング番組に登場し、歌唱した姿は、私の記憶に残っています。

 

 作詞と作曲は山口百恵の楽曲を多く手がけた阿木燿子と宇崎竜童夫妻。手堅いと言えば手堅い選択ですが、来生たかお、松任谷由実、大瀧詠一といった当時のニューミュージック系のアーティストの曲で勝負した薬師丸ひろ子、原田知世に比べると、無難すぎる気はしますね。曲はけっして悪い曲ではありません。むしろ耳障りが良く心地よい曲です。歌詞も阿木燿子にしてはかなり爽やかで、いかにも新人アイドルっぽい可愛らしい出来になっているのですよね。でもね、インパクトはないかな。抜群の透明感のある薬師丸ひろ子、まだすれていなくて大人しくて純な印象の原田知世、それぞれの個性に比べると、美形だけれどこれといった強い癖のない渡辺典子に対して、無難な歌謡曲で勝負するのは、結果からすると弱かったかもしれません。

 

 3枚目のシングル『いつか誰かが…』3曲連続での阿木燿子&宇崎竜童の作詞作曲となりましたが、オリコン最高26位、売上6.4万枚と大きくセールスは下降。女優としてだけでなく歌手としてもヒットを連発した薬師丸ひろ子、原田知世に比べると、歌手渡辺典子は早いうちにヒット戦線から脱落。今思うと、もう少し違う戦略を立てていたら、少し違っていたのかなというところはありますね。