80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.222

 

エヴリデイ  JITTERIN’JINN

作詞 破矢ジンタ

作曲 破矢ジンタ

編曲 破矢ジンタ

発売 198910

 

 

 

個性的な歌詞と女性ドラマーによる印象的なリズム、そしてポーカーフェイスのボーカルで人気を呼んだ、イカ天から飛び出した男女混合バンドのメジャーデビュー曲

 

 最初にJITTERIN’JINNを知ったのは、当時空前のバンドブームの中で人気を博したテレビ番組「三宅裕司のいかすバンド天国」、通称“イカ天でした。毎週多くのバンドが登場する中で、その週の挑戦者が決まり、そして挑戦者が「キング」と対戦してその座を争うという構図で、JITTERIN’JINN1週だけキングの座につきました。私は一回観ただけでJITTERIN’JINNを好きになってしまい、なぜ1回だけでキングの座を陥落してしまったのかがとても不満に思ったものです。しかしながら、イカ天に出場したバンドの中でも、メジャーデビューするのは他の多くのバンドよりも早く実現し、やはりそれだけ大衆的な人気は高かったのでしょう。ほかの主なイカ天出身バンドとしては、たま、FLYING KIDSBIGIN、カブキロックス、NORMA JEANAURABLANKEY JET CITY、RABBITなどがありますが、その中でも私はJITTERIN’JINNがお気に入り。メジャーデビュー以降、しばらくの間、アルバムが出るたびにすぐに買いに行ったものです。

 

 さて当時のJITTERIN’JINNは男224人編成バンド。まずボーカルの春川玲子は、見た目が可愛くてファッションもシンプルだけれどもおしゃれな感じ、ただまったく表情を変えずに笑顔の一つも見せないポーカーフェイス、それが新鮮で魅力的でした。とにかく見た目で引き付けられたというのはひとつの武器になったかもしれません。それから女性ドラマーの入江美由紀。彼女がなかなかのテクニシャンで、JITTERIN’JINNの曲はドラムに依存する度合いが他のバンドよりも高く、それを支えていたのが彼女ではなかったでしょうか。一方、ほとんどの作詞・作曲を手掛けたのが破矢ジンタ。これがまた個性的な歌を作るのですよね。他の真似でないオリジナル感がJITTERIN’JINNは強かったです。残り一人がベースの浦田松蔵。彼は後にバンドを脱退することになりますが、それはずっと先の話。

 

 そのメジャーデビュー曲が今回取り上げた『エヴリデイ』ということになります。JITTERIN’JINNにとっては80年代にリリースした唯一のシングルなので、この企画においては当然一択ということになりますが、JITTERIN’JINNといえば本当はもっとパンチの効いた『プレゼント』(19902)『にちようび』(19906)、後にリメイクされてもヒットした『夏祭り』(19908)などについて語りたいところではありますよね。セールス的にはここまでがオリコントップ10入りを果たしていて、『エヴリデイ』が9位・9.5万枚、『プレゼント』が3位・26.1万枚、『にちようび』が1位・31.9万枚、『夏祭り』が3位・15.5万枚という成績でした。

 

 このラインアップの中で『エヴリデイ』は、JITTERIN’JINNらしさは十分に出ているものの、無難な選択ではあったかもしれません。ただ『プレゼント』『にちようび』といった思いっきり冒険した勝負曲の前の準備曲だったという言い方もできるでしょう。破矢ジンタのつくる女性主体の詩にはセンスがあふれていて、それが春川玲子のキャラクターに見事にはまっているのですよね。別れた彼氏に対して、強がって平気なふりをしようとする気持ちと、実は未練があって一人の時は泣いているというせつない気持ち、そのうらはらな女の子の気持ちをよく男がかけるなと。女の子の表裏一体な気持ちは、他の作品でも巧みに描かれていて、JITTERIN’JINNの楽曲が人気を呼んだ理由の大きな要因だったことには間違いないでしょう。あと、彼らの曲の多くは、比較的演奏時間の短いものが多かったというのもいいですね。下手に間延びさせないで、潔くパチッと終わるところで、JITTERIN’JINNらしい小気味よさにもつながっていたのでしょう。

 

 そして翌1990年、この1年間に凝縮された形で、彼らは大活躍を果たすことになるわけです。