80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.220

 

哀 戦士  井上大輔

作詞 井荻 麟

作曲 井上大輔

編曲 井上大輔 

発売 19817

 

 

 

GS出身の作曲家が手掛けた機動戦士ガンダムの主題歌は、映画のイメージと迫力ある自身のボーカルが見事にマッチしヒット

 

 井上大輔…GSのブームの中で、GSの優等生ブルー・コメッツに参加、その後作曲家に転身しヒット曲を多数送り出し(作品は松居直美の回で紹介しています)、この『哀 戦士』ではソロシンガーとしてもヒット、しかしその後58歳で自死を選択するという哀しい最期を迎えるという、波乱万丈の人生を送った音楽家です。

 

今回取り上げる『哀 戦士』は「機動戦士ガンダム」の劇場版2作目の主題歌として作られた曲で、その相乗効果によってオリコン最高9位、売上21.7万枚の実績を残し、テレビの音楽番組に登場して歌ったりもしたことで、GS時代を知らない当時の中学生にも、井上大輔の名前を轟かせる大事な一曲となりました。そして機動戦士ガンダムはその後よりビッグな存在となっていくことになるのですが、井上大輔がそれに多少なりとも貢献したということにもなったことで、亡くなった今もなお、この作品はファンにとっては重要な一曲になっているのではないでしょうか。

 

さてこの『哀 戦士』は「機動戦士ガンダム」の世界にはぴったりはまる曲でいて、一方で「機動戦士ガンダム」を知らない人にもストレートに楽曲の良さが伝わる曲ではないでしょうか。作詞の井荻麟は、ガンダムシリーズの多くで監督や原作として関わった富野由悠季の別名で、まさにガンダムシリーズにはなくてはならない存在ですから、当然その作り出す世界観はガンダムの世界観そのもの。その歌詞に乗った井上大輔の作ったメロディーはまさにプロの作曲家の仕事ですね。ついでに編曲も担当しているのですが、そのアレンジもまたカッコよくて、当時の私は、実はガンダムシリーズはテレビでも映画でも観たことはなかったのですが、それでもこの『哀 戦士』は一回聴いただけで気に入ってしましましたからね。

 

 なんといっても音楽チャートを賑わす他のヒット曲とは一線を画した言葉のチョイスが当時としては斬新で、それだけでガツンと持っていかれた感じです。

《ひろう骨も燃えつきて ぬれる肌も土にかえる》

《荒野をはしる死神の列 黒くゆがんで真赤に燃える》

《血の色は大地にすてて》

《死にゆく男たちは 守るべき女たちは》

《名も知らぬ戦士を討ち 生きのびて血へど吐く》

《疾風のごとき死神の列》

…この辺りはガンダムの世界観なのでしょうが、1970年代までのアニメの主題歌といえば、大概タイトルやヒーロー名の連呼が王道でしたからね。♪行け行けガンダム 飛べ飛べガンダム ガンダム ガンダム~ なんというところだったでしょうかね。それが80年代に近づくあたりから様相が変わってきて、この『哀 戦士』なんかは隔世の感さえ覚えました。

 

 今聴いてもかっこいい『哀 戦士』を作り歌った井上大輔、もし生きていたら、もっとかっこいい曲を産み出していたかもしれないと思うと、残念な思いはあります。