80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.218
ラ・ヴィアンローズ 吉川晃司
作詞 売野雅勇
作曲 大沢誉志幸
編曲 大村雅朗
発売 1984年9月
人気急上昇中の新人アイドル・ロッカーのサードシングルは、尖がった陣容による怠惰感が心地よくもかっこいいポップロック
吉川晃司、当時から私は大好きでしたし、今でも応援しています。高校時代はよく吉川晃司の曲を、本人になりきってよく歌っていましたし、その後もカラオケで歌いまくりました。同性の私から見て、とにかくカッコよかったのですよね。紅白で問題を起こしてみたり、あの布袋寅泰とユニットを汲んだと思ったら、けんか別れしてみたりと、ちょっと尖がって何をやらかすか分からない感に引き付けられたりしたのでしょうかね。
水球で鍛えたがっちり体系に当時流行りの肩パットスーツ、広島から出てきて東京で成功してやるんだというギラギラした野心。デビュー当初は映画にも出たりと、アイドル的な売り出し方をされる一方で、本人からあふれ出てくる「俺はアイドルじゃない、ロッカーなんだ」という主張。そんなものが全部一体となって飛び出してきた吉川晃司は、デビュー曲『モニカ』(1984年2月)でいきなりの大ヒットを飛ばします。オリコン最高4位、売上33.9万枚の実績を残すと、続く『サヨナラは八月のララバイ』(1984年6月)もオリコン6位、売上22.3万枚とヒット。一躍人気スターとなっていったわけで、その中でリリースされた3枚目のシングルが『ラ・ヴィアンローズ』でした。(ちなみにオリコン最高4位、19.9万枚です。)
『ラ・ヴィアンローズ』の作詞は、『サヨナラは八月のララバイ』に続く売野雅勇が担当。尖がった言葉を使って刺激的な歌詞を書く売野雅勇に、新人アイドル・ロッカーを委ねたのでしょう。作曲はそれまでのNOBODYから変えて大沢誉志幸。そこに数々の作品を手掛けていた大村雅朗が編曲ですから、なかなかの布陣です。そんな『ラ・ヴィアンローズ』は、前後の他の楽曲に比べると、ややゆったり感を覚えるテンポで、ロックというよりはポップスの要素が強い楽曲ではあります。その中にも大沢誉志幸独特のテイストにあふれ、その心地よさが吉川晃司の新しい魅力を引き出していました。そしてそのメロディー、リズムを引き立てたのが、なんといってもリゾート感あふれる売野雅勇の歌詞だったのです。
『モニカ』や『サヨナラは八月のララバイ』或いはその後の『No No サーキュレーション』(1984年12月)、『ユー・ガッタ・チャンス』(1985年1月)、『にくまれそうなNEWフェイス』(1985年4月)などに感じられる疾走感とは違い、時間が止まったような夏のリゾートホテルのプールでの怠惰な時間を感じさせるこの歌詞。
《エメラルドのカクテルに消える光のあわ》
《短い夏の日の恋》
《西風が優しすぎるプールサイド》
《聴きたくもない音楽が君を踊らせる》
《時を止め君だけを抱きしめていたい》
《夏の日に身を任せたプールサイド》
などなど、都会の喧騒を忘れて、ひと夏の恋に身を任せようとする感じが見事に表れていますよね。サングラスの吉川晃司が逆三角形のボディを、日差しの射すプールサイドのパラソルの下のデッキチェアーの上でさらし、泳ぐナイスバディのセクシーガールを眺めている…そんな映像が目に浮かびませんか?けだるい夏の日の午後、まさに
《Lazy Lazy Lazyアフタヌーン》
感にあふれた『ラ・ヴィアンローズ』は、歌っても聴いても気持ちよい曲で、何度カラオケで歌ったことか…。
その後も吉川晃司はスター街道を驀進、1986年からは自らが作詞、作曲を行うようにもあり、完全にアイドルからミュージシャンへ脱皮。一時ソロ活動を休止し、布袋寅泰とCOMLEXを組んだ後、またソロに戻り、デビューから10年以上の間、チャート上位を賑わしてきたのです。その後は年齢とともにギラギラ感は落ち着きに変わっていき、俳優としてもいい仕事を重ね、今に至るわけです。すっかり白色のヘアに変わってしまいましたが、それでもなおやはり吉川晃司はかっこいいまま!
最後に、吉川晃司のシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 ラ・ヴィアンローズ ★
2 すべてはこの夜に ★
3 アクセル
4 にくまれそうなNEWフェイス ★
5 ナーバス・ビーナス ★
6 KISSに撃たれて眠りたい
7 マリリン ★
8 ユー・ガッタ・チャンス ★
9 ジェラシーを微笑みにかえて
10 キャンドルの瞳 ★
★=80年代発売