80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.217
不良少女白書 榊原まさとし
作詞 さだまさし
作曲 さだまさし
編曲 信田かずお
発売 1981年5月
校内暴力全盛期に「2年B組仙八先生」で挿入歌として強烈な印象を残した、さだまさし作詞作曲による不器用な女の子への応援歌
榊原まさとしは夫婦によるフォークデュオのダ・カーポとして活躍(最初から夫婦であったわけではないですが)、1974年6月にリリースした『結婚するって本当ですか』がオリコン最高8位、31.2万枚のヒットとなりました。その後は地道にレコードを出し続け、息長く活躍を続けてはいるのですが、『結婚するって本当ですか』を超えるヒットには恵まれていません。ただ1980年にふたりが結婚したあと、しばらくダ・カーポとしての活動を休んでいた時期に、夫の榊原まさとしがソロデビューし、話題になったのがこの『不良少女白書』でした。
『不良少女白書』はオリコン最高24位ながらも18.1万枚を売り上げ、スマッシュヒットとなったわけですが、その一番の要因は、後にシブがき隊のメンバーになる3人や三田寛子らが出演した、当時人気のドラマ『2年B組仙八先生』の劇中に、効果的に使われたことが大きいでしょう。1980年代初頭はまさに世の中はツッパリブームで、校内暴力の最盛期にあり、当然中学生のドラマでも、そんなツッパリたちが登場し、そんな中での『不良少女白書』ですから、インパクトはありました。
この歌詞で歌われている「少女」については、外見的な描写はありません。これがいわゆるツッパリ系の女の子なのか、或いは目立たない普通の格好の女の子なのかは、聴き手側次第といったところはあります。それでもさだまさしの作った詩は、聴いている者の心に結構刺さるものがあるのですよね。
《あの娘はいつも哀しいくらい ひとりぽっちで部屋の片隅でうずくまってた》
《誰かが自分を救いに来るのを じっと待ってるけど 誰も来ないとわかってる》
といきなりの冒頭がこれです。サビでは
《何故嫌いですか 何故好きですか 左ですか 右ですか》
《何が正しくて 何が嘘ですか 100じゃなければ0ですか》
と聴き手に問いかけてくるので、思わず口ごもってしまいそうになります。このグサッとささるような言葉で、効果的な場面で使われるので、一回聴いただけで、強く印象に残ったものです。この歌を歌っている人はだれか?榊原まさとし?誰それ?当時中学生の私はそんな感じでした。ただ曲は気にいっていて、ある時FMラジオで流れたのをカセットテープに録音して聴いたのを覚えています。(当時はレンタルもない頃で、レコードを買えなければ、いわゆるエアチェックで音楽をカセットテープに録音するというのが唯一の手段でしたからね)。
実はこの曲、さだまさし自身もセルフカバーしているのですよね。中学の時か高校の時か忘れましたが、友人からさだまさしのベストLPを借りた中に、さだまさし版『不良少女白書』が収録されていたのを覚えています。
結果として榊原まさとしのソロシングルとしては、この曲が唯一のトップ100入りの作品となり、その後は再びダ・カーポとしての活動に戻っていきます。ただソロとして出した『不良少女白書』の存在は、今でもこうして強烈な印象として残っているわけで、それだけでもソロとしてのプロジェクトは意味のあるものになったのでしないでしょうか。