80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.211

 

ドリームラッシュ  宮沢りえ

作詞 川村真澄

作曲 小室哲哉

編曲 小室哲哉

発売 19899

 

 

 

若くて可愛い女優さんは皆歌を歌わせられた時代、90年代に時代の寵児となる小室哲哉が80年代最後に手掛けたアイドルソング

 

 当時3Mと言われた美少女牧瀬里穂、観月ありさ、そして宮沢りえは皆女優業を主軸に置きながらも、シングルレコードを発売し、そしてヒットさせています。若くて可愛い女性タレントが芸能界で成功するにはまず歌を出すこと、という流れは80年代までは主流であり、宮沢りえも当然のようにシングルを発売、そのデビュー曲が今回取り上げる『ドリームラッシュ』でした。芸能界には、歌手、俳優、お笑い芸人、バラエティタレント、司会者などいろいろいるわけですが、80年代までにおいては、歌手の地位が一番高かったように思います。90年代以降、歌番組の減少とともに、歌手の地位は徐々な低下していく中で、女優は女優、歌手は歌手、バラエティタレントはバラエティ、なんでもやる人達はアイドルグループを組んで職業アイドルへと、アイドル的な立ち位置であっても、その活動は細分化されていきます。現在活躍している若い女優さんたち、広瀬すずも浜辺美波も永野芽郁も歌手活動は行っていません。アイドル的女優さんが歌を出して一般的にヒットもしたというのは、広末涼子あたりが最後かもしれません。(長澤まさみ、綾瀬はるか、沢尻エリカ、新垣結衣なんかもCDを出していて、チャート的にはそこそこなのですが、一般的なヒットという感じてなかったですしね)

 

 この『ドリームラッシュ』はオリコン最高2位、売上34.1万枚と当時の宮沢りえの勢いのままに、チャート上位に食い込みました。ちなみに他の「M」のデビュー曲の成果はといいますと、牧瀬里穂Miracle Love(199110)が最高4位、31.9万枚、観月ありさ『伝説の少女』(19915)が最高5位、22.7万枚となっていて、全員デビュー曲でチャート上位に入っていました。この中で音楽活動を継続的に行っていたのが観月ありさで、計8曲をシングルチャートトップ10に送り込んでいます。

 

 さて『ドリームラッシュ』に戻りますが、この曲の作詞は川村真澄、作曲は小室哲哉と、アイドルに多くの曲を提供してきた二人が担当しています。特に小室哲哉は1990年代に入ってから大ブレイクし、音楽界を席巻することになるのですが、この時期はTM NETWORKの活動をしながら、アイドルを中心とした他の歌手への曲の提供を積極的に行っている時期でした。その一連の流れの中で、絶賛売り出し中アイドルの宮沢りえのデビュー曲へのオファーがあったのでしょう。まさに『ドリームラッシュ』のメロディーは小室節全開といった印象で、このメロディーで歌詞を替えて宇都宮隆が歌ったら、それこそTM NETWORKの曲でも全く違和感はないでしょう。

 

 ただこの歌、歌詞もメロディーもアレンジもどこか無機質で、ぬくもりを感じないのですよね。聴いていて感情的に引き込まれないといいますか、面白くないのですよね。それは2ndシングルNON TITLIST(19902)3rdシングルGame(199010)でも継続されていて、少なくとも音楽面ではどちらかというとクールな路線で行こうとしたのかななんて思ったりするわけで、だとしたら小室哲哉の実験(2ndシングルまでが小室哲哉)に使われたのではとさえ思ってしまいます。当時の宮沢りえのキャラクターが快活で明るいイメージでしたので、音楽はまったく別だったのでしょうね。とりあえず出せば売れそうだから出したけれども、そもそも音楽を続ける戦略はなかったのだろうと。

 

 実際セールス面では『Game』が最高5位ながらも9.5万枚と失速すると、以後チャート上位を賑わすことはなく、女優業へと邁進していくわけです。