80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.210
DESIRE もんた&ブラザーズ
作詞 園部和範
作曲 もんたよしのり
編曲 もんた&ブラザーズ
発売 1981年10月
大ヒット曲の呪縛から解き放つ、バンドとしてのナンバー2ヒットになった、もんた特有のハスキーボイスを生かした超かっこいい曲
もんた&ブラザーズというと、とにもかくにも1980年4月に発売した『ダンシングオールナイト』ということになるでしょうし、この曲はオリコン1位だけでなく売上161.8万枚というミリオンヒットを達成。日本中のだれもが知っている超絶ヒット曲となり、特にそれを歌うもんたよしのりのハスキーボイスは、強烈なインパクトを残したのでした。もともとソロ歌手として活動していたもんたよしのりでしたが、鳴かず飛ばずで、バンドという形で改めてデビューした最初の曲が『ダンシングオールナイト』だったのですね。そして続く『赤いアンブレラ』(1980年10月)でしたが、これが一転してなかなか難しい曲でして、味わい深いけれども大衆受けはしにくい曲、それでも前作の勢いを借りてオリコン10位、売上24.5万枚の実績を残しました。ただいつまでも勢いだけで売れるはずもなく、3枚目『ウインド&レイニーデイ』(1981年2月)はオリコン36位にまで低下。このまま一発屋の道をたどるのかと思われたところでリリースしたのが、今回取り上げる『DESIRE』でした。
この『DESIRE』はオリコン最高7位、売上32.0万枚となかなかの実績を上げ、もんた&ブラザーズにとっては2番目に売れた曲となりました。『DESIRE』ときくと、後発の中森明菜の『DESIRE』が真っ先に浮かぶ人が多いと思いますし、さらに1990年代に入ってからはLUNA SEAにも『DESIRE』があり、この2つのナンバー1ソングの影に隠れがちなのが残念なのですが、もんた&ブラザーズの『DESIRE』もかっこいい曲なんだということを私は訴えかけたくて、今回この曲をチョイスしました。
この曲はなんといってもイントロと間奏の部分がとても良くて、それこそ何か心の内から欲望がいまにも爆発してきそうに迫りくる感じに聴こえて、私は大好きです。そしてサビになって、その抑えきれない欲望が、もんたよしのりの超絶ハスキーボイスによって『DESIRE DESIRE』と吐き出されていくわけで、ここが実にかっこいいのですよね。
歌詞も特に2コーラス目が好きで《どこかで誰か 悲鳴を上げている がんじがらめで 動きも取れない はだけた心のその奥で》とこのあたり、あまり歌謡曲の中では使われないような、なんかホラー映画風とでもいいたくなるような単語が使われていて、当時はかなりのインパクトを受けたのです。テレビのランキング番組なんかで、ぎりぎり10位に入りそうかどうかのところをウロウロしていた記憶があって、心の中で応援していた記憶もあります。それほどこの曲には魅せられていました。
ただ、もんた&ブラザーズにとっては、これが最後のヒット曲になってしまいます。もんたよしのりの声が特徴でそこにインパクトがあったこともあり、そこに慣れてしまったというのもあるのかもしれません。もう少し息の長いバンドとして活躍してくれるかと期待はしていましたが、なかなか簡単ではないですね、ヒット曲を出し続けるということは。特に『ダンシングオールナイト』の売れ方が爆発的だったため、『DESIRE』の存在自体、今となっては語られることも滅多にないのですが、もんたは『ダンシングオールナイト』だけじゃないんだよと、改めてこの場でアピールさせていただきます。