80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.206

 

ニートな午後3時  松原みき

作詞 三浦徳子

作曲 小田裕一郎

編曲 大村雅朗

発売 19812

 

 

 

40年の時を経て再びスポットが当たった、今は亡き女性シンガーによる、春のおしゃれなシティポップ

 

 2004年に44歳の若さで亡くなったシンガー松原みき。197911月に発売したデビュー曲『真夜中のドア~Stay With Meがオリコン最高28位ながらも、売上10.4万枚というスマッシュヒットとなり、その名前を知らしめることになります。この『真夜中のドア』が約40年の時を経て、ワールドワイドに広がり、再び注目を浴びたのは奇跡的なことだと思いますし、埋もれかけていた名曲が掘り起こされるということも素敵なことです。ただ1979年の発売の曲ということなので、今回取り上げたのは5枚目のシングル『ニートな午前3時』です。

 

 『ニートな午後3時』は‘81年春の資生堂のキャンペーンソングとして起用されたこともあり、春らしいポップで春らしい曲になっています。1980年代における化粧品のCMソングの威力は絶大で、特に資生堂、カネボウの両社は毎シーズンのように工夫を凝らしたCMとそのキャンペーンソングを送り出していました。そしてその中から、多くのヒット曲が生まれてヒットチャートを賑わせてきたわけです。こと資生堂に関しては、『ニートな午後3時』の発売される前年の1980年に、竹内まりや『不思議なピーチパイ』、クリスタルキング『蜃気楼』、松田聖子『裸足の季節』『風は秋色』といった曲がCMをきっかけにヒットしていて、この『ニートな午前3時』への期待も大きかったのではないでしょうか。ただ残念ながら『ニートな午後3時』はそこまでのヒットにはならず、オリコン最高位は26位、売上8.3万枚と、大ヒットにはなりませんでした。ただ松原みきにとっては、デビュー曲以来のオリコンチャート100入りとなったわけで、彼女にとってはやはり大きな一曲になったことは間違いないでしょう。

 

 さて『ニートな午後3時』ですが、なんといってもタイトルの「ニートな」は小ぎれいなといった意味の言葉で、21世紀になってよく使われ出したプー太郎的な意味合いでの「ニート」とは異なる言葉ですね。そのタイトルの下、歌詞を書いたのは三浦徳子。春の化粧品のCMだけあって、おしゃれな雰囲気ではありますが、ウキウキ楽しい恋が始まるというよりは、過去の恋はもう忘れ、元カレからの久しぶりの誘いも振り切って、未来のために自由を楽しもうといった、女性への応援歌みたいな内容になっています。作曲も

 

売れっ子小田裕一郎ということで、万全な体制で臨んだはずの一曲ではなかったでしょうか。ただ大人の女性を狙い過ぎた感もあって、歌うにはちょっと難しい感じのメロディーで、万人受けするタイプの歌ではなかったかもしれません。それでも松原みきにとっては、『真夜中のドア』に次ぐ売上枚数を残し、代表曲のひとつになったわけです。

 

ただこれ以後はヒット曲に恵まれず、時代も経て、ご本人も若くして亡くなり、昔こんな歌手もいたなぁぐらいの存在になっていたところで、昨今のちょっとしたブーム。もしご本人が存命でいられたなら、どんな風に感じられたでしょうかね。ほんと、何が掘り起こされて、何が話題になるのか分からない、面白い時代になったものです。