80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.200

 

テンダー・レイン  高井麻巳子

作詞 森本抄夜子

作曲 山口美央子

編曲 チト河内

発売 198712

 

 

 

なぜか秋元康がソロ曲の作詞を手掛けなかったおニャン子、最後のトップ10入りシングルとなった、優しいメロディーの7枚目シングル、

 

 秋元康と高井麻巳子の結婚が明るみになった時、ついに商品に手を出したかと言われたものですが、高井麻巳子のソロシングルのA面曲については、一度も作詞を手がけていなかったのですね(B面は1曲だけ秋元康作詞曲があるようです。) おニャン子クラブ本体やうしろゆびさされ組としては作詞を行ってはいますが、後ろめたさから手を出せなかったのではないかと、穿った見方をしたりしたものです。河合その子、新田恵利、国生小百合、吉沢秋絵、福永恵規、渡辺満里奈、渡辺美奈代、ゆうゆ、城之内早苗、内海和子、工藤静香、生稲晃子はみんな一度は秋元康の作詞した曲をA面で使っているのに、なぜ高井麻巳子だけ?。おニャン子クラブ解散後にソロデビューした我妻佳代、斉藤満喜子は別とすると、ほぼ高井麻巳子だけです。何かあったのでしょうね、きっと。

 

 そんな高井麻巳子は、おニャン子の中ではちょっと落ち着いたお姉さん感があって、キャビキャビした女子高生風のメンバーたちの中で、やや異質な感じもあったのですが、そんなところに秋元氏も魅かれたのかもしれません。人気も高く、デビュー曲『シンデレラたちへの伝言』(19866)から4曲続けてオリコン1位、その後2曲が2位という実績を残していました。今回とりあげる『テンダー・レイン』7枚目シングルのシングルで、オリコン3位という結果を残しています。ただこれが最後のオリコントップ10入りの曲でもあったわけです。

 

 個人的にはこの曲、高井麻巳子のシングルの中で一番好きなのです。ソロデビュー当初の高井麻巳子の曲は、うしろゆびさされ組での楽曲との差別化という意味もあったのでしょう、或いは明るく元気な他のおニャン子に比べて静かで大人しいイメージに合わせたということもあるのでしょう、『シンデレラたちへの伝言』、『メロディ』(19869)『約束』(198611)『かげろう』(19873)と静かでしっとりとした地味目な曲が多かったように思います。それが少し変化をつけて、ポップで可愛らしい色合いの曲になったのが、5枚目の『情熱れいんぼう』(19876)で、実はこの曲もとりあげたかったのですが、次点で涙をのんだ次第です。ただ次の『うそつき』(19879)で元の路線にすぐ逆戻りして、その次が『テンダー・レイン』だったのです。

 

 作詞は森本抄夜子で、女性アイドルに多く詩を提供していた作詞家です。ほかにはCoCo『夢だけ見てる』『だから涙と呼ばないで』『夏空のDreamer』3曲をオリコントップ10に送り込んでいます。作曲はシンガーソングライターの山口美央子で、1983年に『恋は春感』がオリコン22位の中ヒットとなっています。他のアーティストへの曲の提供も行っていますが、こちらもCoCoEQUALロマンス』『夏の友達』、ともさかりえ『くしゃみ』、光GENJI『風の中の少年』、渡辺満里奈『もう夢からさめないで』などがオリコントップ10に入っています。そんなコンビの作詞・作曲による『テンダー・レイン』は、そのタイトルどおり優しい歌詞、優しいメロディの聴き心地の良い作品に仕上がっていました。

 

恋人に対して、好きで仕方ないくせに、そんなそぶりを見せまいと、《すましたまま手を振ったけど》《笑った途端に負けになる》《胸の奥を見透かされるわ》《強がりなら得意だけれど》と素直になれない感じが可愛らしいですし、一方で《円舞曲(ワルツ)みたいに歌う雨音 髪に指にこぼれる》《ひと雨ごとに春に近づく にじむ街も華やかに》《過去と未来へ 踊る雨の音符(メロディ)》と雨の描写がとても素敵なのですよね。これが聴いていてとても心地よくて。できたら勢いのある最初の頃に、この曲が出ていたなら、もっと多くの人の耳に届いたのではないかと思うと、ちょっと残念な気はします。

 

このあとシングルは1枚だけ出して、翌1988年にはさっさと芸能界に見切りをつけて、秋元康と結婚してしまうわけです。当時はなんで秋元康なんかと言われたものですが、今となっては、元おニャン子の中でも一二を争う勝ち組になったわけですからね。たいしたものです。