80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.179
Self Control TM NETWORK
作詞 小室みつ子
作曲 小室哲哉
編曲 小室哲哉
発売 1987年2月
直後のブレイクを予感させるキャッチーでそれでいて切なげな売れ線メロディー、その後の路線を方向づける転換となった一曲
1984年にデビューした小室哲哉を擁する3人組TM NETWORKは、何も最初から売れていたわけではありません。2ndシングル『1974』(1984年7月)で初めてオリコンに登場、44位で1.3万枚の売上を黒くしますが、ようやくトップ10に入ってきたのは10thシングル『Get Wild』(1987年4月)。この曲でブレイクを果たしたTM NETWORKは以後、出す曲出す曲ヒットを放ち、チャート上位の常連となっていくわけです。そのブレイク直前の9thシングルとして発売されたのが『Self Control』でした。
この時期、TM NETWORKは徐々に注目を集め始めていたことは確かで、シングルと同じ月に発売された同タイトルのアルバム『Self Control』は彼らとして初めてアルバムチャートのトップ10に入るヒットになっていました。また小室哲哉は作曲家としても注目され始め、前年1986年には渡辺美里『My Revolution』『Teenage Walk』『BELIEVE』、中山美穂『JINGI・愛してもらいます』がヒットし、小室哲哉の所属するTM NETWORKの曲はどんなものかと、興味を持つ人もちょうど増えていた時なのでしょう。そんな一人が実は私で、LP『Self Control』をしっかりと購入してしまいました。購入の動機としては、先行したシングル『Self Control』を聴いて気に入ってしまい、他の曲も聴いてみたいと思ったからです。
シングル『Self Control』はおそらく誰が聴いてもかっこいい曲でしょうし、当時彼らの曲の作詞をすることが多かった小室みつ子(血縁関係はなく、偶然にも同じ苗字)の別れのシーンを切なげに記した歌詞ともマッチして、どこか爽やかさも感じる作品にもなっているのですね。このあたりはさすがヒットメーカー小室哲哉。他のアーティストばかりだけでなく、自分たちTM NETWORKに対しても売れ線の曲をかけるようになってきた、そんなコツを掴んだのがこの頃だったのかもしれません。当時大学生だった私ですが、所属していた音楽関係のサークルの先輩方にも「TM、いいですよ」なんて、この時期宣伝していたものです。ですから『Get Wild』でブレイクしたときには、先見の明があったと、密かに自慢げな気分だったりしたわけです。
《君を連れ去る車を見送って 追いかけることさえできなかったあの夜》《言いたいこともうまく言えなかった このままサヨナラをするわけにはいかない》と、大切な君を失った後にこのままに諦めるわけにはいかないと自らを奮い立たせ、《今ならきっと間に合うはずだから 悲しみに閉ざした君のドアをたたくよ》《その髪に もう一度この指を触れさせて》と行動に出る《僕》。そして《教科書は何も教えてはくれない》《明日のことなど誰もわからない》《君をとりもどせ 夢をとりもどせ》《自由のナイフで とらわれた心を 粉々にするさ バラバラにするさ》と心の叫びを振り絞るサビのひとつひとつの言葉が強いインパクトを残します。その詩が乗った小室哲哉特有の同じメロディーの繰り返しは、まるで拳を振り上げて叫び続けているような感覚にさえ陥るから、さすがというしかありません。当時の私にはこの歌がビシッと響いたのです。
『Self Control』は結果としてオリコン最高33位と、それまでの曲と比較しても、成績が良かったわけではありませんが、次から始まる大ヒットへの布石となる曲であったことしはいえるでしょう。ここを起点に、小室哲哉のサクセスへの道が急上昇していくことになるのは、敢えて述べる必要のないことかもしれません。
最後に、TM NETWORKのシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。
1 Self Control ★
2 DIVE INTO YOUR BODY ★
3 RESISTANCE ★
4 KISS YOU ★
5 Love Train
6 COME ON EVERYBODY ★
7 Get Wild ★
8 一途な恋
9 Come on Let’s Dance ★
10 BEYOND THE TIME ★
★=80年代発売