80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.178
瞳で片想い 八木さおり
作詞 来生えつこ
作曲 来生たかお
編曲 船山基紀
発売 1986年10月
ミスマガジンのグランプリ、可愛くて純朴だけれどどこか地味な清純派アイドルとして一番輝いたデビュー曲
八木さおりは「ミスマガジン」の1985年の第4回グランプリを受賞し、翌1986年にアイドルとして歌手デビューしました。この「ミスマガジン」グランプリは第1回が伊藤麻衣子、第3回が斉藤由貴ということで、その後を受けた八木さおりは相当期待されていたものと思われます。デビュー当時の八木さおりのイメージは純朴、素朴、清楚といった言葉が当てはまり、ショートカットのヘアスタイルで、どこかあか抜けない感じが初々しい魅力となっていました。デビュー曲は当時中森明菜や薬師丸ひろ子、南野陽子らアイドルにヒット曲を提供していた来生姉弟ということで、力もかなり入っていたことでしょう。
その力の成果もあってか、デビュー曲『瞳で片想い』はオリコン最高20位となり、デビュー曲としてはまずまずの実績を残しました。ただ残念ながら、結果としてこれが彼女のキャリアハイということになってしまったのです。八木さおりは斉藤由貴を輩出したミスコンテストのグランプリだけに、可愛いには違いなかったのだけれども、どこか地味で大人しい印象で、それが災いしたように私は思っています。それはその後の芸能人生を知っている今だからこそ感じることなのかもしれませんが、どこか無理してアイドルをやっているような雰囲気があって、もっというと当時から薄幸そうな印象がうっすらと漂っていたのです。ですから、いくらグランプリときいても、この娘売れるだろうなという感じは、正直なところあまりしませんでした。
歌唱力もけっしてあるわけではなく、どこか危なっかしい感じ。ただアイドル歌手としてはそれ自体珍しいことではなく、堂々と歌えばそれはそれでいいのですが、偏見かもしれませんが、どこか自信なさげだったのですよね。それは楽曲の影響も大なり小なりありまして、まあ大先生に作ってもらって言いにくいのではありますが、デビュー曲としては地味です。特に歌詞がまったく印象に残らないのですよね。凡庸な単語が並んでいて、キャッチーな言葉もなく、第一タイトルからして、よくアイドルの歌に使われる言葉を組み合わせただけで無難すぎるのです。『夏色片想い』『桃色片想い』『いちごの片想い』『片想いグラフィティー』『気づいたら片想い』…『瞳にピアス』『瞳にSTORM』『瞳はダイヤモンド』『君の瞳に恋してる』『瞳の誓い』…古今女性アイドルの定番ですね。
そんな感じでデビュー曲では頑張ったものの、アイドル歌手としてはこの後ジリ貧になっていき、軸足をドラマに置いていきます。調べてみると、結構女優としては多くの作品に関わっていて、今でも時折ドラマなどにも顔を出しているのですよね。歌手業よりも女優業の方が水に会っていたのでしょうね。ただびっくりしたのはヌード写真集でして、デビュー時の印象がとにかく純朴そうなイメージだっただけに、ギャップがありました。元アイドルがこういった写真を出すと、どこか落ちぶれ感とか、起死回生の一発感があって、そんなところからも薄幸なイメージが生じてくるのでしょうか。ただご本人は40歳を過ぎて結婚されたということで、薄幸とかのイメージは観る側が勝手に抱いているだけなんですけれどもね。