80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.172
A面で恋をして ナイアガラトライアングル
作詞 松本隆
作曲 大瀧詠一
編曲 多羅尾伴内
発売 1981年10月
大瀧詠一&佐野元春&杉真理という伝説的企画ユニットによる唯一のヒットシングルは、時代感あふれるとびきりおしゃれなラヴソング
1981年当時中学生だった私、音楽は好きだったけれども、興味の中心は、テレビやラジオのベストテン番組に登場してくるような歌手やバンドにありました。ただ、大瀧詠一とか佐野元春とか、ベストテン番組に入ってこなくても、多くの支持を集めているアーティストや曲があることも、次第に理解し始めたころでもあり、ラジオも良く聞いていた時期でもあったので、自ら積極的に聴きにいかなくても、自然に彼らの曲を耳にすることは多くなってもいました。今回とりあげる『A面で恋をして』は、大瀧詠一、佐野元春、杉真理3人がタッグを組んだ企画ユニットのシングルでしたが、これかオリコン最高14位、売上19.3万枚と、順位はそこそこながら、売上枚数からすると結構なヒットになったのです。そしてそのヒットにより、ラジオで流れる機会も多くなり、ラジオをちょくちょく聞いていれば、自然に耳にすることができる曲になったわけです。
もっともナイアガラトライアングルは、これ以前にも大瀧詠一、山下達郎、伊藤銀次の3人で組んで活動していた時期もあり、固定のメンバーによるグループというよりは、大瀧詠一が主導するその時その時のプロジェクト名としての意味合いが強い集まりとも言えそうです。
この『A面で恋をして』は決して難しい曲ではなく、たびたび繰り返される印象的な♪A面で恋をしーてーのフレーズが耳に残り、頭の中で癖になるほどリピートされそうな、「なんとなく」心地いい曲になっています。そして何よりも松本隆の詩がとにかくおしゃれで、こんな歌を歌っているナイアガラトライアングルとは、大瀧詠一とは、佐野元春とは、杉真理とは、ほかにはどんな歌を歌っているのだと、その世界に引き込むには十分な楽曲でした。そういった点において、この曲はまさに彼らの狙い通りの役割を果たしたのではないでしょうか。翌年発売されたアルバム『NIAGARA TRIANGLE Vol.2』はオリコンLPチャート2位、年間10位と大ヒットし、佐野元春個人としても1982年になってシングルでヒットチャートのトップ100に登場するようになっていくのです。
この歌詞を今改めてみてみると、1980年頃の時代感があちらこちらにあふれていて、ノスタルジーさえ感じさせるのですよね。そのあたりまで計算されていたのであれば、本当に恐れ入りましたということになるのですが、そこまでは「まさか」でしょうね。それはともかく、A面、ドーナツ盤、ジルバ、蝶ネクタイ、ミラーボール…アメリカの青春映画を観ているような映像が浮かんでくるようで、さすが松本隆としかいいようがありません。実際、このあと松本隆は作詞家の「大先生」としての道を進んでいくことになるわけですから。