80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.169

 

君は天然色  大瀧詠一

作詞 松本隆

作曲 大瀧詠一

編曲 大瀧詠一

発売 19813

 

 

 

ヒットチャートでの実績はともかく、日本音楽界に大瀧詠一ありを轟かせた、後年まで色あせない一曲

 

 大瀧詠一は1970年代初頭から、はっぴいえんどとして、ソロ歌手として、あるいはナイアガラトライアングルとして、アルバムを中心に日本音楽界に新しい風を送り込んできました。しかしながらシングルのヒットには長年恵まれず、初めてのトップ10入りは199711月発売の『幸せな結末』まで待つ必要があります。もっとも1986年から1996年までの間、シングル曲を一切発売していないことから、それほど自身のシングル曲のヒットにはこだわってはいなかったのでしょう。むしろ他のアーティストへの楽曲提供に力を入れていて、これまでに取り上げてきた演歌勢の森進一やお笑い芸人によるうなずきトリオのほか、小林旭、松田聖子、薬師丸ひろ子、小泉今日子といった幅広いジャンルの歌手のヒット曲を生み出してきました。

 

 そんな中でも80年代に発売した『君は天然色』、『恋するカレン』(19816)などは、大瀧詠一の代表曲として、その後の日本の音楽界に大きな影響を与えた曲として、聴き継がれてきているのです。ただシングルとしての売上は両曲とも目立った実績はなく、『君は天然色』がオリコン最高36位、売上9.1万枚、『恋するカレン』は最高67位、売上2.5万枚にとどまっています。これにはひとつ大きな要因があって、この両曲を収録したアルバム『A LONG VACATION』が同じ19813月に発売されているのですね。実はシングル『君は天然色』とアルバム『A LONG VACATION』は同日発売。そもそもがアルバム・ミュージシャンであった大瀧詠一のファンにとっては、アルバムだけ買えば、わざわざシングルを買う必要がないというわけで、いわゆる両曲はアルバムからのシングルカット曲だったというわけです。今手是も名盤の誉れ高い『A LONG VACATION』ですから、シングルのヒットチャートなんかよりも、まずはアルバムを手に入れることが優先。一方アーティスト側からしても、シングル曲はアルバムを売るための宣伝ぐらいの感じだったのでしょう。

 

 今でも、テレビ番組だったり、CMだったり、駅の発車メロディだったり、いろいろなところで使われる『君は天然色』は、発売から40年経過した今でも全く古さを感じさせないところが、とにかくすごい!です。ですから、当時の日本としては、本当に最先端の音楽だったのでしょうね。1980年代の前半ごろは、まだ日本の音楽なんて聴けるか、本当の音楽好きはやっぱり洋楽を聴かなきゃ的な雰囲気があった頃でしたが、それでも大瀧詠一とか、佐野元春とか、山下達郎とか、そのあたりだったら、「何の音楽を聴いてる?」と聞かれた時の答えとしては、恥ずかしくない、むしろかっこいいという感じは確かにありましたから。

 

そんな感じで『君は天然色』では、大瀧詠一の作り出すメロディやアレンジがトレンド感おしゃれ感抜群だったのですが、盟友松本隆の詩がこれまたせいいっぱいおしゃれなのですよね。背景にはいろいろなエピソードがあるようですが、作詞は松本隆でとこだわった理由も、この詩をみれば納得ですね。のちに別の歌手へ作詞した曲でも似たようなフレーズが使われていたり、結構ご本人お気に入りだったりするのではないでしょうか。

 

その後大瀧詠一は、冒頭でも記したように、テレビドラマの主題歌に使われた『幸せな結末』、『恋するふたり』(20035)と大ヒット曲を残した後、201365歳で亡くなりましたが、大瀧詠一の残した数々の作品は、今でもしっかりと生き続けているのです。