80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.162
使い放題tenderness バービーボーイズ
作詞 いまみちともたか
作曲 いまみちともたか
編曲 バービーボーイズ
発売 1988年6月
男女ツインボーカルという独特の形態による掛け合いの妙と、個性的なタイトル&歌詞で人気を博したバンドが上昇期に出したかっちょいい一曲
バービーボーイズといえば、KONTAと杏子の男女のツインボーカルによる掛け合いの妙と、いまみちともたかの作り出す独特の歌詞とタイトルで、前にも後にも類似する存在がいない個性がなんといっても魅力のバンドでした。当時所属していた大学のサークルの先輩2人が、盛んにバービーボーイズがいいと話していたのが、5thシングル『負けるもんか』(1986年4月)、6thシングル『なんだったんだ?7DAYS』(1986年10月)の頃。初めてオリコントップ100に入ってきたのが『負けるもんか』でこれが47位、続く『なんだったんだ?7DAYS』が50位と、まだまだ一般的にはメジャーな存在ではなかったのですが、『もォ やだ!』(1985年2月)、『でも!?しょうがない』(1985年6月)、『チャンス到来』(1985年10月)と、話し言葉をそのまま使ったタイトルが独特で、また新しいバンドが出てきたなと思ったのを覚えています。そしてその先輩たちの先見どおり、7thシングル『女ぎつねon the run』(1987年4月)が28位、8th『泣いたままでlisten to me』(1987年8月)が19位と、どんどん順位を上げて、「きている、きている」という状況になってきたのです。そんな中で発売された10thシングルが『使い放題tenderness』でした。
この歌は、掛け合いの妙というよりは、とにかくカッコよさで勝負したような曲で、歌う時の演出も含めて、めちゃくちゃかっこいいだらけなのです。まずイントロ部分ではKONTAが得意のソプラノ・サックスを思いっきり吹き鳴らし、その後1コーラスめはすべて一人で歌い切ります。通常杏子のボーカル部分が途中に挟まれることで、男女の会話の掛け合いのように形で進んでいくことが多いのですが、この曲に関しては、1コーラスの間杏子は登場しません。しかも、かなり下がった立ち位置で、顔をハットで隠していて、その存在すら消しているような演出で待っているのです。そして2コーラスめに入ると、満を持して杏子が登場して歌い出すという、ここまでの展開がとにかくカッコいいのですよね。このバンドは歌の世界に合った雰囲気を作り出すことが上手です。
この曲の歌詞の舞台はおそらく、夜のバーみたいなところなのでしょう。一見普通の男女二人連れがデートしている感じなのでしょうが、お互いに内心はいろんなことを考えているということなのですね。特に男側の複雑な心境が、ともするとぞんざいに聞こえる言葉で歌われていて、いろいろ二人の関係性を想像させられるところが面白いのです。このあたりの言葉の使い方のセンスは、いまみちともたか独特のもので、バービーボーイズの人気を支えている大きな要素になっていたはずです。
この曲でテレビへの出演も増え、勢いに乗ったバービーボーイズは、ついに次のシングル『目を閉じておいでよ』(1989年1月)で初のオリコントップ10入りの7位、売上もバービーボーイズとしては最高の16.8万枚を売り上げ、名実ともに人気バンドの仲間入りを果たし、1980年代終盤のバンドブームの中心的存在となったのです。KONTAについては、当時はやりのトレンディドラマまで出演と、活躍の場所も広がっていったのですが、ただそれから程ない1992年の1月に解散をしてしまったのです。