80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.157

 

ドリフの早口ことば  ザ・ドリフターズ

作詞 いかりや長介

作曲 たかしまあきひこ

編曲 たかしまあきひこ

発売 198012

 

 

 

コミックバンドとしても数々のヒット曲を持つ伝説的コントグループ最後のヒット曲

 

 ザ・ドリフターズはいうまでもなく、昭和の偉大なコントグループとして、日本のお笑い界で一世風靡しましたが、そもそもはバンドとしての活動をメインにしたコミックバンドとして活躍。1969年から1970年にかけては『ミヨちゃん』(19695月、オリコン最高11位、売上25.4万枚)『ドリフのズンドコ節』(196911月、最高2位、80.7万枚)『ドリフのほんとにほんとにご苦労さん』(19704月、最高4位、26.2万枚)『誰かさんと誰かさん』(197011月、最高3位、31.4万枚)とヒット曲を連発していました。その後は「8時だョ!全員集合」が国民的人気番組になっていくとともに、コントグループとしての活動がメインになってきます。そんな中でも、19769『加藤茶のはじめての僕デス / 志村ケンの全員集合 東村山音頭』が最高8位、売上21.1万枚とヒットし、ヒットメイカーとしての健在ぶりを示しましたし、そして198012月に発売した、今回取り上げる『ドリフの早口ことば』も最高10位、売上23.0万枚の実績をあげたのです。そしてこの曲は、ザ・ドリフターズの歌唱曲としては最後のシングルになり、同時に最後のトップ10ヒット曲となったわけです。

 

 レコードジャケットの雰囲気からして、どこかソウルフルな雰囲気を感じさせますし、1980年当時売り出し中のシャネルズを彷彿させるような指人形(?)が特徴的ですが、曲の方もやはりソウルフルなリズムにのせて、ドリフターズの面々が早口言葉を繰り返すというような楽曲になっています。『生麦 生米 生卵』『カエルぴょこぴょこ 三ぴょこぴょこ 合わせてぴょこびょこ 六ぴょこぴょこ』『李も桃ももものうち』『隣の竹垣 竹立てかけた』などおなじみの早口をただ並べて繰り返しただけの作品で、最後におなじみのギャグで締めくくるという、いかにもドリフらしいふざけた作品なのですが、テレビ番組でのギャグと連動させて話題を呼び、レコードの売上にも結び付けるというプロモーション力はさすがです。子供たちがテレビを見てまねをし、学校で友達同士で歌い、レコードを買い、という流れを作り出すことには実に長けていたと思います。前述の『東村山音頭』は一世を風靡して志村けんの代名詞になりましたし、19784月発売の『ゴーウエスト』もドリフの人形劇番組のテーマ曲。またザ・ドリフターズの曲ではないものの『「ヒゲ」のテーマ』もそう。ギャグとして話題を引き起こしながら、それをレコード売上という実利に結び付けていく中で、ミュージシャンであるザ・ドリフターズの存在もアピールしていくという、一石三鳥のような手法で、しばしば成功をさせてきたのがザ・ドリフターズだったのです。

 

 こうしたお笑い番組と音楽との融合の中心は、1980年代にはいると、ザ・ドリフターズから萩本欽一へ移行していきます。奇しくも土曜夜8時台の視聴率を争った同士のバトンタッチ。因縁のようなものを感じないでもありません。そして1990年代以降は、そういったお笑い番組と音楽の結びつきはさらに広がりを見せ、とんねるず、山田邦子、ウッチャンナンチャン、ガレッジセール、などの冠番組からヒット曲が次々に出ていくようになり、当たり前のこととなっていくわけです。そんなお笑い番組と音楽の融合の基盤を作ったのが、まさにザ・ドリフターズであったといえるのではないでしょうか。