80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.152
ドリーミングナウ AURA
作詞 れっず
作曲 龍巻のピー
編曲 AURA、佐藤宣彦
発売 1989年12月
見かけによらないポップでキャッチーなメロディーが魅力、テレビ企画出身の色物風ビジュアルバンドのデビュー曲
4人組のロックバンドAURAはデビュー前からテレビ番組に出演、それも『三宅裕司のいかすバンド天国』といった音楽番組だけでなく、バラエティ番組『天才・たけしの元気が出るテレビ!!』にも出演するなど、当初から異色の存在で、どちらかというと色物バンドという印象が強かったかもしれません。髪色や衣装を黄色、紫、緑、赤といった派手派手にして、見た目にはハードロックとかヘビメタとか、そっち系の雰囲気のいで立ちながら、コミカルなキャラクターというギャップが受けて、話題を呼びました。そんな話題性にバンドブームが加わり、AURAは1989年『ドリーミングナウ』でデビューしました。
一見とっつきにくそうに思えた彼らの音楽ですが、実はポップでキャッチーな親しみやすいメロディーで、そこもまた魅力のひとつでした。デビュー曲『ドリーミングナウ』はオリコン最高8位、売上12.1万枚とヒットし、彼ら唯一のトップ10入り&売上10万枚を果たした楽曲となりました。この曲はメンバーによる作詞・作曲で、ほんとに、見た目とはまったくイメージの違う爽やかなラブソングで、一回聴くとすぐに口ずさめるような、覚えやすいメロディーが特徴。それをハイトーンボイスのボーカルみんなのれっずが歌い上げるのですが、その派手なビジュアルにはそぐわないような爽やかな言葉が吐き出されるのです。《陽ざしのシャワー からだに浴びて 明日からはセーラ》《夏が終わる前に 静かな風がBaby 二人を通りすぎてゆく》…。内容的には、おそらく嫉妬したのか喧嘩したのか、悪化した恋人との関係を、自分の強がりから修復できずにいたことに対し、そんな強がりは捨てて迎えに行くよと、改めて恋人に対して愛を誓うようなものになっています。
当時はイカ天に引っ張られるようにバンドブームの絶頂に差し掛かるようなときで、雨後の筍のように次から次へと新しいバンドが出現してくるような状況。その中でどう個性を出してファンをつかんでいくかというのは、どのバンドも苦労していたことと思います。実力だけで勝負できるようなバンドはともかく、見た目だったり、パフォーマンスだったり、どこかで目を引かないと、気にも留めてもらえないというそんな中で、派手なビジュアルと親しみやすしキャラクターによって、デビュー曲でトップ10入りを果たせたということは、まずは掴みには成功したということでいいでしょう。
ただ結局、見た目のインパクトというものは、最初に出してしまったら、あとは慣れていくだけ。それを維持する方がもっと難しいことだったのでしょう。当時圧倒的なインパクトで、デビュー曲が話題になったバンドたち、たとえばカブキロックス、たまなども、結局はそれ以上のインパクトを2枚目以降のシングルで与えることができずに、尻すぼみになっていってしまいました。AURAもまたそのパターンでした。2枚目『愛・オーランド』(1990年3月)も、前作に引き続いてキャッチーでポップな作品で、オリコン最高11位とまずまず健闘したものの、『ドリーミングナウ』を超えるには至りませんでした。アルバムも当時レンタルして聴きましたが、中には結構良い曲もあって、彼らのメロディメーカーとしてのセンスは個人的には好きだったのですが、長くは続かなかったことが残念です。