80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.147

 

ベストセラー・サマー  The TUBE

作詞 三浦徳子

作曲 鈴木キサブロー

編曲 武部聡志、鈴木キサブロー

発売 19856

 

 

 

まさか近い将来「夏」専属バンドとして一世を風靡することになるとは…、のちに大きな意味を持つ新人バンドの夏ソング

 

 デビュー当時のバンド名はThe TUBEと冠詞がついた形でしたが、いきなりノリのいい夏ソングでデビューを果たした4人組。後からみれば、最初からすでに夏バンドとしての存在感を見せつけようとしていたように映りますが、実際には最初の数年間は、夏ソング以外にも積極的に挑戦はしていたのですね。ただヒットするのは夏ソングばかりということで、いつのまにか夏以外の季節を諦めて、夏に特化していった結果、息の長いバンドとなったわけです。

 

 さてこのデビュー曲『ベストセラー・サマー』は6月と、盛夏を前に発売され、しかもキリンビールのCMソングにも起用されたことで、いきなり多くの人々の耳に届く恵まれたスタートとなりました。そのおかげでセールス面でも、オリコン最高13位、売上11.4万枚とまずまでの成果を残したのです。ただバンドという形ではありますが、作詞三浦徳子、作曲鈴木キサブローと当時は自作曲ではなく、The TUBEはプロのヒットメーカーによる曲を歌っていました。3曲目からは織田哲郎、栗林誠一郎といったビーイング系おなじみの作曲家と組むようになり、自作の曲を歌うようになったのは1989年のSUMMER CITY』以降になります(作詞では1988Remember Meが最初の自作)。ですから、この『ベストセラー・サマー』は、一定以上のヒットをノルマとして発売されたことには違いないでしょう。

 

 作詞の三浦徳子(よしこ)は多くのヒット曲を送り出していた売れっ子作詞家です。代表曲をピックアップすると、杏里CAT’S EYE、松田聖子『青い珊瑚礁』、郷ひろみ『お嫁サンバ』、吉川晃司『モニカ』、沢田研二『ス・ト・リ・ッ・パ・ー』、工藤静香『嵐の素顔』、早見優『夏色のナンシー』、田原俊彦『君に薔薇薔薇…という感じ』、光GENJI『笑ってよ』、八神純子『パープルタウン』、岩崎宏美『万華鏡』、永井真理子『ミラクル・ガール』、柏原よしえ『恋人たちのキャフェテラス』、酒井法子『男のコになりたい』、堀ちえみ『リ・ボ・ン』ribbon『そばにいるね』Sexy ZoneSexy Summerに雪が降る』などなど、1アーティスト1曲に限定しても、これだけあります。

 

 そんな三浦徳子作詞による『ベストセラー・サマー』ですが、結構アクの強い歌詞に仕上がっています。3枚目のシングル以降、しばらく作詞を担当する亜蘭知子の夏ソングとは色の異なる内容で、この部分からしても、コンセプトも固まっていなかったのだろうなということは、容易に想像できます。《ジャンジャンジェラシー燃やして あの娘の胸元すべり込む》《男の視線がzig zag zig zag 素肌を下から攻めれば》《ジャンジャンムーンライト燃やして あの娘の一部を刺激する》と、お世辞にも上品とは言えない歌詞で、この曲を聴いただけでは、The TUBEとは、軟派路線の軽薄なイメージのバンドなのだと思ってしまいますよね。もちろんビールのCMソングということでの制約もあったのでしょう、当時はまだビール=サラリーマンというイメージが強く、CMもそこを狙ったものになるでしょうから、その結果がこれであったということではあるでしょう。実際、第2弾シングル『センチメンタルに首ったけ』もこの路線を継承する曲でしたが、成績はオリコン最高64位、売上0.9万枚と惨敗。結局はCMの力が大きく、その時点で路線を見直していくことになります。

 

 実は個人的に『ベストセラー・サマー』ってちょっとした思い出のある曲で、当時高校3年生の私、運動会の応援合戦で、なんとこの曲に自分たちでふりをつけて、クラスメイト3人で応援のダンスを踊ったのですね。残りの2人が体操部ということもあって、アクロバティックな動きも取り入れて、放課後には学校の近くの神社で練習して、揃いの衣装も用意してという具合で、結構気合が入ったものでした。なぜこの曲だったのかということには大して意味がなく、当時流行している中でノリの良いということで選んだだけですが、その時の様子が卒業アルバムにも残っていて、懐かしい思い出です。

 

 さてTUBE3曲目『シーズン・イン・ザ・サン』からは冠詞もとってTUBEとなり、作家陣も一新、『シーズン・イン・ザ・サン』がオリコン最高6位、31.0万枚という売上をあげたヒットとなり、人気バンドの仲間入り。アクの強い軟派ソングから夏のBGM的な路線に変更すると、毎年夏になるとヒットを飛ばす定番バンドとしての地位を確立していくことになるのです。

 

最後に、TUBEのシングル曲で好きなベスト10を選んでみました。

1 さよならイエスタデイ

2 ガラスのメモリーズ

3 あー夏休み

4 だって夏じゃない

5 シーズン・イン・ザ・サン 

6 ベストセラー・サマー 

7 夏だね

8 BECAUSE I LOVE YOU 

9 -純情-

10 きっと どこかで

=80年代発売