80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.144

 

恋人達の長い夜  星野由妃

作詞 上野正希子、許瑛子

作曲 林哲司

編曲 若草恵

発売 19894

 

 

 

いきなりトップ20入り、自ら作詞に加わったアーティスト志向の強いアイドルのデビュー曲

 

 1989年の新人賞レースに加わるべく、この『恋人達の長い夜』で歌手デビューを果たした星野由妃。可愛らしいルックスと、当時のアイドル歌手としては珍しいいきなりの作詞(本名が上野正希子)への参加というアーティスト性もあって、18歳というアイドルとしては遅いスタートながら、デビュー曲はオリコン最高16位と、いきなりのトップ20入りを果たしました。『恋人達の長い夜』はアイドルのデビュー曲としては、ずいぶん落ち着いたマイナー調の曲で、デビューの年齢や本人のアーティスト寄りの志向を鑑みて、他のぶりぶりの可愛いを売りにしたアイドルとは差別化を狙ったであろうことが想像できます。この年の新人女性アイドルとしては田村英里子、田中美奈子、島崎和歌子、CoCoribbon、宮沢りえなどがいましたが、賞レースに実際に加われていたのは田村英里子ぐらい。1990年代に入ると、ソロのアイドル歌手にとっては厳しい時代に突入していくことになり、まさにその境目の時期にデビューした星野由妃にとっては、環境的は厳しかったでしょう。

 

 さて『恋人達の長い夜』では前述のように自ら作詞にも加わり、共作ということになっています。この年発表したアルバムの曲についても、何曲か作詞を手掛けていますし、1991年からは作曲も手掛けるようになっていますので、曲作りへの意欲というものは、デビュー当時から強く、そちらの方向へ進みたいというのもあったのかもしれません。ただまだまだデビューしたての『恋人達の長い夜』では、特に印象に残るようなフレーズがあるわけでもなく、無難に書かれているというのが率直な感想です。もちろんプロの作詞家の手が入っていますので、手直しされているものではあるでしょうが、暗く地味な曲であることには違いないでしょう。ちなみに共作の許瑛子のヒット作としては、中森明菜SAND BEIGE 砂漠へ』、南野陽子『秋のIndicationがあります。それでも歌唱力はアイドルとしては並み以上のものがあったため、音楽としての出来はけっして悪いものではなかったです。ただ16位という結果のわりには、当時の印象は薄いように感じています。

 

 その大きな理由としては、2枚目のシングル『はなさないで』(19898)がオリコン最高38位と低下し、さらに3枚目以降はオリコン100位圏外へと大失速してしまったことになるでしょう。大抵1980年のアイドルたちは、事務所の力も注がれることから、最初の1年間についてはある程度の成績をキープすることが多いのですが、すでにデビュー年2枚目での失速には、いったい何があったのでしょうか。この後星野由妃の芸能界人生は波乱を招くことになります。一時引退から事務所移籍、本名への改名、ヘアヌード写真集、スキャンダル騒ぎと、まあいろいろありました。歌手業から女優業へと活動の中心が移っていくことになったのですが…