80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.135

 

鳥の詩  杉田かおる

作詞 阿久悠

作曲 坂田晃一

編曲 坂田晃一

発売 19816

 

 

 

子役出身の人気女若手優が、ドラマの挿入歌として発売した唯一のヒット曲

 

 当時16才。子役として評判を得た後、ドラマ「3B組金八先生」で衝撃的な役どころを演じて再び脚光を浴び、続けて人気ドラマ「池中玄太80キロ」にも出演し、その挿入歌として歌われたのが、この『鳥の詩』でした。当時は、この後波乱万丈の人生を送ることになるなんて想像できるわけもなく、人気に目をつけられて、大人の戦略で歌を歌わせられたのだろうなという感覚ぐらいしかありませんでしたね。歌い方も朴訥とした感じで、学校の音楽の授業で歌うような歌い方で、もちろん他の専業アイドル歌手のような可愛らしいふりつけもなく、女優さんがレコードを出してみました感の強いシングル曲ではありました。ただその朴訥とした感じが、この曲の持つ素朴な印象と見事にマッチして、地味だけどもいい曲に仕上がったのです。

 

 実はそれ以前も、子供のころからシングルレコードを何枚か発売していたのですが、まったく売れるということがなく、この『鳥の詩』が突然で初めてのヒットとなった杉田かおる。この曲は結局オリコン最高10位とトップ10入りし、売上も28.0万枚と、なかなかの実績を残したのです。そして結果として、杉田かおる唯一のオリコントップ100入りの曲になっているわけで、そういった点でも杉田かおるにとっては大きな1枚になったのではないでしようか。テレビの音楽番組で歌うこともあり、一般にも浸透していったのです。

 

 作詞は阿久悠ですから、力も入っていたのでしょう。一方作曲は坂田晃一。こちらもプロの作曲家ですが、有名なのは西田敏行『もしもピアノが弾けたなら』、ビリー・バンバン『さよならをするために』があります。この『鳥の詩』は、人と人の別れを鳥と鳥のそれと重ねながら、いなくなった愛しい相手を思うと同時に、来るべき巣立ちを想像して歌う、実に素朴な歌です。これがドラマ人気と、杉田かおるの当時はまだひた向きで健気なイメージ、そして楽曲の素朴さがうまく調和して、ヒットを呼んだのでした。《鳥よ鳥よ鳥たちよ 鳥よ鳥よ鳥の詩》とサビで1番、2番、3番ととつとつと歌う姿には、なんとなく応援したくなるような気持ちにさせるものはありましたね。歌もそれほどうまいというわけではありませんが、逆に下手というわけでもなく、女優さんがレコードを出してみましたというレベルでは、ちょうどいい感じ。もっと下手なアイドルはたくさんいましたからね。

 

 ただ、杉田かおるは、このあと1曲だけシングルを出しただけで、歌手活動はやめてしまいます。女優業に専念という感じではあったのですが、ある時からバラエティー番組で強烈なキャラクターを演じるようになります。しかしバラエティも離れると、今では農作物を育てる生活へと、とにかく波乱万丈。ですから、この素朴な歌でヒットを飛ばしたということは、今からすると別人の感さえ抱いてしまうほど、とにかく素朴な歌だったのです。