80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.130

 

初恋進化論  藤井一子

作詞 阿木燿子

作曲 筒美京平

編曲 新川博

発売 198610

 

 

 

中山美穂の友人役でドラマデビュー、スマッシュヒットのデビュー曲の続く第二弾はシニカルな思春期初恋ソング

 

 当時人気上昇中の中山美穂主演『夏・体験物語 パート2』でドラマデビューした藤井一子、同時にデビュー曲の『チェック・ポイント』がドラマ主題歌にも起用されたことで、オリコン最高14位、売上9.6万枚と、上々のスタートを切りました。知名度も得て、さらに上昇を狙った2枚目のシングルが『初恋進化論』になります。作曲は2作続けての筒美京平ということで、当然さらなるヒットを狙っていたことでしょうし、作詞は阿木燿子。初恋ではありながら、奥手なボーイフレンドに対し、もっと積極的に来てほしいという本音を歌にしていて、このあたりはドラマでのイメージとかなりリンクした感じになっています。

 

 《門限きっかり送ってくれても 私ちっとも嬉しくないの》《一般受けするあいつの性格 清く正しくそればかりだわ》《昔KISSならおでこ 今はKISSでもあそこ…》《ふたりでレコード聴いてる間も 登ドアを必ず開けておくのね》《昔 逢引きランデブー 今のデイトはノータブー触ってみて》などなど、とにかく先に進められない男の子に対して、積極的なのです。このように歌詞はいかにも阿木燿子らしい感じもありますが、タイトルもアイドルっぽいものではなく、インパクトのあるものになっていて、この曲によって、藤井一子の売り出し方の方向性も明確になってきたように思います。ぶりぶりの可愛い子ちゃんタイプのアイドルではなく、セクシー系、ツッパリ系で行こうと、そんな意志が見え隠れする2枚目シングルとなったのです。ただこの路線、当初の中山美穂とかぶりますし、勇直子、網浜直子、杉浦幸等々、わりと近い路線のタイプのアイドルが同時期にたくさんいて、実際にはどうだったのでしょうか。オリコン最高26位、売上1.8万枚と、2枚目にして大きく低下してしまったのです。

 

 正直なところ、藤井一子が中山美穂になるには、いまひとつ華がなかったというのはあるでしょう。かといって歌が上手だとか、体を張れるという武器があるわけでもなく、今のようなチーム戦ではない個人と個人の競争の中では、なかなかそこから突き抜けていくには、しんどいところはあったと思います。以後数枚シングル曲を出しますがジリ貧となり、1990年頃まで芸能界にいましたが、約5年で引退と、早めの決断をされたようです。