80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.129
NEVER MIE
作詞・作曲 Dean Pitchford, Michael Gore
日本語詞 松井五郎
編曲 戸塚修
発売 1984年6月
ピンクレディー解散後、ソロ歌手として6作目で初めてヒットに到達した洋楽カバー曲
相方のケイちゃんこと増田けい子はソロとしての最初のシングル『すずめ』で、一足お先にヒット曲を出していたのですが、ミーちゃんの方はソロ歌手となった直後は結構苦労していました。ソロ1枚目『ブラームスはロックがお好き』(1981年7月)はオリコン最高51位と不発、4枚目、5枚目に至ってはオリコントップ100圏外と大苦戦だったのです。やはりもうかつての人気はなく、ソロ歌手としては失敗に終わるのかと思われところで、一発この『NEVER』がヒット。ドラマ『不良少女とよばれて』の主題歌に起用されたこともあって、オリコン最高4位、売上27.4万枚となり、留飲を下げたのでした。結果てしてこれが唯一のオリコントップ10シングルになり、ミーちゃん、ケイちゃん仲良く、ソロシングルとして一曲ずつをトップ10に送り込んだということで今に至ってます。
さて、この『NEVER』はヒット映画「フットルース」にも起用された豪州のバンドのカバー曲で、そこに松井五郎が日本語の詩をつけています。松井五郎は安全地帯を始め、多くのアーティストに詩を提供している売れっ子の作詞家。安全地帯『悲しみにさよなら』『熱視線』『じれったい』『碧い瞳のエリス』、工藤静香『恋一夜』『くちびるから媚薬』『メタモルフォーゼ』、坂本冬美『また君に恋してる』、氷室京介『KISS ME』『JEALOUSYを眠らせて』『VIRGIN BEAT』、石川優子&チャゲ『ふたりの愛ランド』、HOUND DOG『AMBITIOUS』『ONLY LOVE』、矢沢永吉『東京』、吉川晃司『KISSに撃たれて眠りたい』、田原俊彦『ごめんよ涙』『かっこつかないね』、中森明菜『月華』、中山美穂『セミスウィートの魔法』『女神たちの冒険』、光GENJI『勇気100%』、V6『愛なんだ』、MAX『Ride on time』等々提供したヒット曲は多数。この『NEVER』については、原曲のイメージを損ねないようにということを最大限に意識した詩だったのではないでしょうか。英語にまぜて日本語詞をつけてはいますが、実際には大きな意味を持たせたようなフレーズはなく、無論ストーリーもそこにはありません。抽象的な描写でうまくメロディーにのるようにして、あとは好きなようにドラマにも使ってくださいというような印象を持ちました。
ですから、この曲のヒットには、やはりドラマ『不良少女とよばれて』の貢献度が高いのは間違いないでしょう。当時人気の大映テレビ制作によるいわゆる大映ドラマの一つであり、その象徴的なキャスト伊藤麻衣子、伊東かずえ、松村雄基といった若手が集結した作品で、また社会的にも校内暴力、ツッパリ、不良、暴走族といったものが大きくクローズアップされている背景もあり、ドラマは話題になりました。その主題歌である『NEVER』はどこかおどろおどろしい雰囲気のある曲調で、いかにも不良然としたいでたちをした不良少女、不良少年の醸し出す怖さと不思議とマッチしていたのでしょうね。それまで低迷していたソロ歌手MIEの息を一気に吹き返させるには十分だったのです。かつてのファンがMIEにとつてのヒット曲に相応しいシングルが発売されるのを待っていたかのように、この曲はヒットチャートの上位に上っていったのでした。
この後MIEはヒットに恵まれることはなく、名前も「未唯」と変えたりと迷走する部分もあったのですが、今までのキャリアを考えた時にもピンクレディーとしてのヒット曲以外にもこの『NEVER』というヒット曲が一曲でもあったということは、かなり大きなことだったのではないでしょうか。