80年代青春歌謡365アーティスト365曲 vol.127
賽を振れ! 一世風靡セピア
作詞 SEPIA
作曲 GOTO
編曲 GOTO
発売 1985年3月
まったく新しい個性的パフォーマンス軍団、そのイメージを如実に表現した、実に彼ららしい硬派な生き様ソング
柳葉敏郎、哀川翔、小木茂光ら今でも芸能界の一線で活躍する俳優たちを輩出した一世風靡セピアは、1984年6月に『前略、道の上より』でデビューし、いきなりオリコン最高5位、売上28.8万枚のヒットをとばします。彼らのパフォーマンスはそれまでに日本の歌謡界では観たことのないようなもので、当時はかなりのインパクトを与え、話題にもなりました。そもそも歌いながら踊るということ自体、今では当たり前になり、いろいろなタイプのダンス&ボーカルグループが登場しては、音楽界を賑わせていますが、当時としてはかなり限定的。アイドル歌手が振り付けで踊るということは、ピンクレディーやジャニーズ事務所所属のタレントが見せていて、何かしらの振り付けがされることはアイドル歌手にとっては当たり前にはなっていましたが、一方でいわゆるアーティスト、ミュージシャン的な立ち位置の歌い手たちが、ダンスを売りにするということは、ほとんどなかったように思います。せいぜいラッツ&スターが「めっ!」と目の横でピースサインをするぐらい。そんなところに一世風靡セピアが登場したのですから、衝撃的であったことは事実です。
そもそも彼らは劇団員のメンバーということで、ミュージシャンとは一線を画していましたし、もちろんアイドル歌手でもなく、出自という部分でも独特でありましたが、さらにその楽曲がまた個性的だったのです。1990年代以降に登場するダンスグループは、ちゃんとしたダンスミュージックに合わせてパフォーマンスをしているのに対し、一世風靡セピアの曲は【和】なのです。歌の中での掛け声が「Hey」でも「C’mon」でもなく、「素意や(ソイヤ)」なのですから。アレンジも完全に和テイスト。和太鼓がよく似合います。ですから、日本の歌謡界において、後にも先にも、似たグループはいない、そんな存在だったのではないでしょうか。
そんな一世風靡セピアは、2枚目のシングル『道からの組曲』(1984年10月)に続きリリースした3枚目のシングルが『賽を振れ!』でした。この曲もオリコン最高5位を獲得し、売上も二けたの10.9万枚ということで、3枚連続でトップ10入りを果たすことになりました。曲調はそれまでの流れを継続する和テイストの硬派な〈生き様ソング〉。一世風靡セピアは甘っちょろいラブソングなど歌いません。彼らのリリースした曲の多くは、男の生き様を歌にした内容になっていて、少なくともストレートなラブソングはほとんどなく、それが彼らのイメージでもあったわけですね。実際に『賽を振れ!』の歌詞をみても《愛だと恋だと浮かれ くだらぬ日々走れば》なんて言ってしまっているわけですから。
それにタイトルそのものが『賽を振れ!』ですから、どこかギャンブル的なイメージ、さらにはヤクザサン的な印象を抱きやすいのです。敢えてそこを攻めてきたということ自体が、一世風靡セピアの方向性を如実に表していたのではないでしょうか。サビの歌詞《あばよDise! あばよDise! 明日に向い賽を放つ》も、簡単そうに思えて、実はいろんな意味にとれるのですよね。この曲に限らず、一世風靡セピアの歌は、男の生き方を考えさせられるような、そんな歌が多くて、そのあたりもかなり独特ではありました。
ただシングル曲としてのヒットはこの辺りまでで、4枚目『風の唄』(1985年7月)以降は、シングルリリースは続くものの、トップ10からは次第に遠ざかっていきます。ただし一方でメンバー個人としての活躍が顕著になり、冒頭で挙げた3人以外にも、春海四方、武野功雄といった元メンバーたちが俳優として活躍していて、そういった点では、優秀なメンバーが集まっていたグループだったのだということを、改めて認識させられるのです。